リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
明子を舐めるように眺めながら、坂下が一緒にいたよその部署の若い男子社員三名に、なにかを耳打ちしていた。
坂下の耳打ちに頷きながら明子を忌々しそうに見ているその目から、ロクな話じゃないことは明子にも判った。
「あんたが、余計なことを言ってくれたせいで、こっちは大変なんだぞ」
「別に使えないってわけでもねえのに、あれこれおかしいおかしいって。ふざけんなよな」
「ひょっとして、あなたたちも、あの恥かしい改修作業をやっていたの?」
いやん。結局、藪の中の蛇さん、見ちゃったじゃないと、明子はうなだれたくなった。
「報告書。笹原部長が林田本部長にあげたそうよ。今度はちゃんと直してくださいね」
うんざりとした顔で彼らを見ながら、明子はそう告げる。
出てきた本部長という固有名詞に、彼らも流石に顔を引きつらせた。
あの報告書作成に潰された時間にやるはずだった作業は、まだ丸々と残っている。
こんな子たちのために、今日も残業になると思うと、明子は情けなくなってきた。
いつまでも、こんな連中にかまけている時間がもったいないわと、明子は紀子の手にあるマグカップを見て、給湯室へと促した。
言うべきことは、もう言った。
それをどう受け止めるかは、彼ら次第だ。明子には、これ以上どうしようもない。
「おひとり様同士、やっぱ、気があうな」
「森口。俺が付き合ってやるよ。遊んでやるから」
卑下た笑い声をあげて、そんなことを言う新藤に続けて、紀子を揶揄する坂下を紀子は軽蔑したような目で眺めた。
坂下の耳打ちに頷きながら明子を忌々しそうに見ているその目から、ロクな話じゃないことは明子にも判った。
「あんたが、余計なことを言ってくれたせいで、こっちは大変なんだぞ」
「別に使えないってわけでもねえのに、あれこれおかしいおかしいって。ふざけんなよな」
「ひょっとして、あなたたちも、あの恥かしい改修作業をやっていたの?」
いやん。結局、藪の中の蛇さん、見ちゃったじゃないと、明子はうなだれたくなった。
「報告書。笹原部長が林田本部長にあげたそうよ。今度はちゃんと直してくださいね」
うんざりとした顔で彼らを見ながら、明子はそう告げる。
出てきた本部長という固有名詞に、彼らも流石に顔を引きつらせた。
あの報告書作成に潰された時間にやるはずだった作業は、まだ丸々と残っている。
こんな子たちのために、今日も残業になると思うと、明子は情けなくなってきた。
いつまでも、こんな連中にかまけている時間がもったいないわと、明子は紀子の手にあるマグカップを見て、給湯室へと促した。
言うべきことは、もう言った。
それをどう受け止めるかは、彼ら次第だ。明子には、これ以上どうしようもない。
「おひとり様同士、やっぱ、気があうな」
「森口。俺が付き合ってやるよ。遊んでやるから」
卑下た笑い声をあげて、そんなことを言う新藤に続けて、紀子を揶揄する坂下を紀子は軽蔑したような目で眺めた。