リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「冗談でしょ。今のあなたなんかに、森口さんは、もったいなさすぎるよわ」
「なんだとっ」
明子の言葉に気色ばむ坂下を、紀子は冷ややかに見るだけだった。
「私、リスペクトできないような男、興味ないし」
紀子はきっぱりとそう言って「小杉さん、行きましょう」と、明子を促して歩き出した。
「なにかリスペクトだよ。そんなこと言ってるから、いい年して男の一人もいない」
「誰がいい年で、男もいないって?」
紀子を嘲る坂下に、思いがけない反論の声があがった。
声の主に、そこにいた者たちが一斉に目を向けた。
「お前ら、いい加減にしろよ。仕事に戻れっ」
ふんと鼻を鳴らしながら、それでも野木と目を合わせる度胸もない様子で、新藤はそっぽを向いた。
「言っておくけどな。森口は、俺と来年、結婚するんだよ」
だから、お前らなんかにとやかく言われる筋合いも、笑われる筋合いもねえからなと、野木は坂下たちを威嚇するように見回した。
みなが、ポカンとした顔で野木を見ていた。
「こらっ 勝手に話しを進めないのっ」
「うるせえな。決めたもんは決めたんだから、つべこべ抜かすな」
「もう。さっそく、木村くんに感化されてきたんでしょ」
単純というか、なんという、もう、困った人だわねと、腕を組んで野木を睨む紀子の目には、それでもどこか幸せそうな色を浮かび、嬉しそうにはにかんでいた。
「なんだとっ」
明子の言葉に気色ばむ坂下を、紀子は冷ややかに見るだけだった。
「私、リスペクトできないような男、興味ないし」
紀子はきっぱりとそう言って「小杉さん、行きましょう」と、明子を促して歩き出した。
「なにかリスペクトだよ。そんなこと言ってるから、いい年して男の一人もいない」
「誰がいい年で、男もいないって?」
紀子を嘲る坂下に、思いがけない反論の声があがった。
声の主に、そこにいた者たちが一斉に目を向けた。
「お前ら、いい加減にしろよ。仕事に戻れっ」
ふんと鼻を鳴らしながら、それでも野木と目を合わせる度胸もない様子で、新藤はそっぽを向いた。
「言っておくけどな。森口は、俺と来年、結婚するんだよ」
だから、お前らなんかにとやかく言われる筋合いも、笑われる筋合いもねえからなと、野木は坂下たちを威嚇するように見回した。
みなが、ポカンとした顔で野木を見ていた。
「こらっ 勝手に話しを進めないのっ」
「うるせえな。決めたもんは決めたんだから、つべこべ抜かすな」
「もう。さっそく、木村くんに感化されてきたんでしょ」
単純というか、なんという、もう、困った人だわねと、腕を組んで野木を睨む紀子の目には、それでもどこか幸せそうな色を浮かび、嬉しそうにはにかんでいた。