リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「野木主任と森口さんの話です」
「あ?」

なんだ、そりゃ?
質問の答えになっていないような話を始めた明子に、牧野は眉を寄せる。
そんなことには構うことなく、明子は歩きながら、休憩所でのやり取りを掻い摘んで牧野に説明した。
途中、何度か不愉快そうに、牧野は鼻を鳴らした。
どうせ、噂になって流れてくるものなら、面白おかしくされないうちに話したほうがいいと、簡潔にまとめて明子は牧野に事実を伝えた。

「まあ。あいつらが付き合ってんのは知ってたけどな。ふうん。結婚まで話が進んだんだ」
「知ってたんですか? なんか、みんな驚いた顔してましたけど」
「なんかな。伝説があるらしいぞ」
「伝説?」

突然、そんなことを言い出した牧野に、なんのことだろうと、明子は不思議そうに牧野を眺めた。

「付き合い始めて、初めての彼女の誕生日に、俺が用意してやった花束プレゼントすると、うまくいくんだとさ。だから、フラワーショップ牧野の出張販売、社内の極一部で繁盛してんだよ。そのおかげで、その手の情報が俺の耳には入りやすいんだ」

なんでそのご利益、俺に回って来ねえかなあと、口を尖らせる牧野を見て、明子はたまらず吹き出した。

「笑うなよ。ひでえな」
「すいません。なんか、かわいらしいお顔だったので」
< 584 / 1,120 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop