リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「でも、やっぱ。結婚って覚悟がいりますね。なんか、決めたはいいけど、だんだん不安になってきたりもしているんです」
「そりゃ、なんとかブルーとかってやつじゃね?」
「そうなんですかねえ」
「まあ、一過性のものだ、そんなのは」
「そうだといいんですけど。なんていうか、もう、簡単には逃げられないんだなあって。なんか、そんな実感が毎日こう、ヒシヒシときて」

既婚者の川田と小林の言葉を聞きながら、木村はそう言葉を続ける。

「逃げられない?」

渡辺が、どういうことだというように木村を見ていた。
同じようなことを、ついさっき聞いたわねと、紀子の言葉を思い出しながら、明子も木村のことばに耳を傾けた。

「今までだったら、逃げていられたことがあるだろ。でも、結婚するって、今までなら簡単に逃げていたものからも、これからはなにがあっても逃げないぞって、そう覚悟を決めることなんだなあって。生活のこととかさ。将来のこととか。なんとなく、今までは見ないふりして目を背けて、逃げて楽しく遊んでいたけど。これからは、そうはいかないんだなあって」
「あー。判るな、それ。付き合ってたころなんて、家を建ててローン抱える生活なんて、考えたことなかったけど、そういう現実が、どーっんて、乗っかってくるんだよな、所帯を持つと」
「なあ。子どもを育てて、学校にいかせるだけで、こんなに金かかるのかって。親になって初めて判るな。この現実は」

木村の言葉に、なるほどなるほど、判る判ると頷くのは、やはり川田と小林だった。
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