リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「とーうさん。とーうさん。おー肩をたんとんとん」

肩の凝りをほぐそうと、腕を上げ下げしている君島を見て、明子は「叩きますよ」と言うと、ぞうさんの節回しで妙な歌を歌いながら、君島の肩を叩き始めた。

「俺はパパで、そっちはとうさんだったな。そういや」

その歌を聴きながら、小林は笑い出した。
なぜか昔から、君島の肩を叩くときは、とうさん、とうさんと、明子はそう歌っていた。

そろそろ、二十一時になろうという時間だった。

ようやく、今日の仕事にも区切りがついて、そろそろ帰ろうかと思っていたところだった。
室内にいるのは、この時期にしては珍しく三人だけだった。
今年は客先に常駐しての案件が、例年よりも多いということも、その要因なのだろう。
牧野も社内にはいるが、二時間ほど前から、笹原とともに林田の元に行っている。
明日の対応を検討しているらしい。
牧野曰くの悪巧みの相談というやつだろう。
午後は溜まっていた君島の仕事などを手伝っていた島野は、三十分ほど前に退社した。


-一人でのご飯は味気ないから、一緒に、夕飯はどうだい?


帰り間際。
また、明子の手を取りながらそんなことを言う島野を、キレイな姉ちゃんたちの顔でも見ながら、高い酒でも飲んで来いと、小林は笑いながら追い出した。
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