リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「それでも、わざわざ、家でする話しでもないだろう」

話をする場所なんか、他にいくらでもあるだろう。
まだなにかを疑っている君島のその目に、明子は疲れたように息を吐き出し、少し怒ったように君島を睨んだ。

「最初は、ご飯を食べながら話してたんですよ。でも、私が途中で飛び出しちゃって」
「飛び出した?」

なにがあった?
眉を潜めて、少しだけ明子を心配するような声で「なにがあったか、教えてくれ」という君島の言葉に促され、明子は言葉を選びながら話し始めた。

「できるかって聞くから。そこの会社と、どんな因縁があるのか知ってて、できるかって。なんで、そんな意地悪なことを言うんだろうって、いやになっちゃって」

それで、飛び出しちゃったんです。
むくれた顔でそう言う明子に、君島はふわりと肩の力を抜いた。心配するようなほどのことじゃなかったなというように、苦笑する。

「意地悪のつもりはないと思うぞ。できるかって聞いただけだろ?」

淡々と喋り続ける明子に、君島はそう言って聞かせた。

「だって。牧野さんの『できるか?』は『できるな?』っていう確認じゃないですか?」
「ん?」
「できないって言うと、いつだって、牧野さんは怒るんですもん。できないって言うの、許してくれないですもん、いつも。できないはずがない、できるだろ、やれって。そう怒鳴って。甘えるなって突き放しますもん」

拗ねたようにそう言い募る明子に、実際にできただろうと君島は笑いながら諭す。
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