リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「それで、あいつは家まで押しかけてきたってわけか?」

君島のその問いかけに、そうなんですと明子は答えながら、君島の首の付け根を親指で押し揉み続けた。

「まあ、今回は本当に裏のない『できるか?』だったんで、考えろって言葉に甘えて、お時間を貰うことにしましたけど」
「なるほどなあ」

へえ。家になあ。
小林はそんなことを言いながら、何かを勘ぐっているように明子を眺める。

「なんですか? もう。なんか、すごく感じ悪いんですけど」
「お嬢さんや。確認な?」

小林が、にやりと笑いながら、明子を楽しそうに探るような目で見た。

「そりゃ、仕事帰りにどっかで話してた感じだよな。わざわざ休日に呼び出してって感じじゃねえよな?」
「そうですね。仕事帰りでしたよ」
「そんな話をして、で、家に押しかけて、また話し込んで。だよな?」
「ですね。なんですか、それが」
「ってことは、そこそこな時間だよな」

小林の問いかけに「まあ、そうですねえ」と、明子は言葉を濁した。
もう、朝でした。昼間でしたなどと言い出したら、それはそれで、ますます詮索の手が厳しくなりそうだわという警告音が、明子の頭でガンガン鳴り響いたので、それはあえてさっくりと伏せることにした。
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