リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
その意味が分からず、明子は怪訝な面もちで島野を見つめた。

「忠告。もし、牧野の前でそれを言うときは、君島さんから聞いたと、必ず添えるように」

でないと、面倒になるかもしれないからね。
声のトーンは変わらないが、漂う雰囲気に微妙な険しさが入った。

「牧野は、知られたくないんだ。自分のそういう一面を。君にね」
「そういう一面?」

ますます、困惑していく明子を、島野の妖しい光を宿した瞳が捕らえた。

「牧野の、雄の部分。みたいなとこだよ」

一瞬にして、明子の頬が熱く火照り出す。
明子はその気まずさに戸惑い、目を泳がせた。
明子のそんな動揺に気づいているのか、いないのか。
島野は変わらない口調で言葉を続ける。

「だから、軽い気持ちで迂闊に口にしないほうがいい。君島さんや小林さんから聞いたと判れば、牧野も安心して、君のおふざけにでもなんにでも、いつものように付き合ってくれるだろうけどね。どこの誰から、なにを吹き込まれて、君がそんなことを言ったのか判らないと、下手したら、君が怖い思いするかもしれないからね」

いいかい。ちゃんと忠告したよ。
忘れるんじゃないよと念を押す島野に、明子は「今さら、別に、牧野さんのやんちゃな話を聞いたところで、そんな驚きませんよ」と、負け惜しみ地味た口振りで島野に告げた。
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