リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「男を知らない生娘ならともかく。もう、そんなわけでもないだろう」

一瞬。
島野の視線が、明子の体を舐めるように這う。その目線に、明子は恥じらうように身を竦めた。
また、ふわりと表情を崩した島野から漂う雰囲気には、明子を楽しそうに口説いていたときの気安さと明るさがあった。
一瞬、垣間見せた、妖しさと艶めきさは、なくなっている。

「これくらいのこと、相手に応じて、笑いながら余裕で窘めるか、毅然とした態度で拒みなさい。そんなふうに、ただ怯えて、やめてやめてと騒いでいるだけじゃ、男を楽しませて、もっと煽るだけだよ。車の中なんていう、こんな密室で煽ったりしたら、それこそ、何されるか判らないよ」
「誰でも彼でも、こんなことしたりしませんっ」

島野のあまりにも身勝手なそのセリフに、明子は声を張って抗議した。

「でも、されただろう。ムリに車に引きずり込んだわけじゃないよ。キミが、自分から乗り込んだんだよ」
「それは」
「会社の男なら、悪さはしないって? それは甘いよ。気をつけなさい」
「島野さんだから」
「信用した? ロクに話したこともない、女たらしのロクデナシを? それは光栄だな。ということは、このままホテルに連れ込んでも大丈夫かな」

その言葉に、明子は唇を噛み締めるしかなかった。
< 624 / 1,120 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop