リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「まあ、不正解というか。表向きの答え、だな。俺たちの知ってる答えを、教えてあげるよ」
「俺たち?」
「君島さんとか、小林さんとか、俺とかね。あいつが車に乗せる女性は、家族か」

抱きたいと思ってる女だよ。
くいっと、唇の端を上げて笑いながら、ちらりと明子を眺めたその顔に、明子はなにも言えなかった。


‐抱きたいと思ってる女。


その言葉が、耳の奥で反響し続ける。

「恋人は、あいつにとっては、もう家族だからな」
「小林さんは、そんなこと」
「言う訳ないだろ。キミに合わせての芝居くらい、同然するさ」

当然のようにそう言われ、また、熱いものが込み上げてきそうになる。
あの夜、牧野の車に乗ると言った自分を、小林はどんな目で見ていただろう。
なにかがあったと勘ぐって、密かに笑っていたのかと思うだけで、目頭が熱くなった。

「面白おかしく、笑っていたりしないから。そこは信用してほしいな」

せめて、君島さんと小林さんは、信用してあげてほしいな。
涙ぐみそうな明子に、その理由を察した島野が、真剣な声でそう告げる。

「牧野が、かわいいのと同じくらい、キミのことも気にかけているよ。そこは疑わないであげてほしい。キミがかわいくて笑うことはあっても、キミを笑い者にする気なんて、二人にはないよ」

真摯な目で明子を見つめる島野に、明子はやがてこくりと頷けた。
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