リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
いやと、そう思う気持ちの反面。
温もりに。
口付けに。
溺れていくような心地よさを覚えている自分が、いた。
拒みたいのに。
吐息に。
指先に。
明子が、溶かされていく。
なにもかも、島野の思惑通りに操られているようで、明子には悔しかった。

島野の唇が、明子の唇の右の口角を捉える。

「小杉くん。体の力を、抜いてごらん」

こんな緊張させていたら、気持ちいいものも、よくならないよ。
あやすようなその声に、明子は泣き声になっていた。

「なんで……、こんなこと」
「予行練習って言っただろう」

牧野とこうなったときのね。
ふふ、と、どこまでも楽しそうな軽い笑い交じりのその声に、流されまいと抗う明子が「余計なお世話ですっ」と、声を張り上げた。

「いきなり。あいつからこんなことされたら、どうする?」
「どうするって……」

話を逸らさないでくださいっ
叫び声にも似た明子の訴えに、けれど島野は動じた様子もなく、言葉の先を続けていく。

「あいつは君のことになると、臆病になってるからな」
「え?」

思いがけないその言葉に、明子の自分の状況も忘れ島野の凝視した。
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