リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
知られてしまったら……

心の奥、一番深い場所に。
そっと眠らせた、牧野の輪郭すら、もう、そっとなぞって思い出すことさえ、牧野は許してくれないと、そう思ったから。
でも、……


(知っていたの? 牧野さん)
(私の気持ちに、ホントは、気付いてたの?)


明子の唇が、かたかたと小さく震えた。


(知っていて、あなたに振り回されて、傷ついて泣いている私を、見ていたの?)


明子の閉じた瞼から、一筋の、雫が零れた。
そんな明子を、島野は宥めるように抱きしめて、眦に唇を寄せる。

「逃げたくなったんだ?」

牧野から。側にいるのが辛くなったんだ?
明子の涙になにかを確信したように、島野はそう囁き尋ねた。
なにも応えない明子の瞼に、眦に、額に、頬に、耳元に、島野は口付けを繰り返しながら、喋り続けた。

「男と女は違うんだと、言い聞かせているんだけどね」

あいつは、どうもそれがよく、判ってないんだよな。
くつくつと、少し底意地の悪い声で笑いながら、島野は牧野のことを語り出した。
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