リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「でもなあ、バッテリーは去年、交換しているはずなんだよ」
「一年くらいで、寿命なんですか?」
「いやあ、三年くらいは持つはずなんだ」
「でも、膨張してたんですね?」
「ああ。君島課長も不思議がってな」
「君島課長も、徹夜したんですか?」

忌引き明けでいきなり徹夜ってと、そう続いた明子の言葉に「まあ、他にもいろいろあってな」と、小林は苦笑した。

「いろいろ?」
「納豆屋さんのサーバーも落ちた」
「へ?! ……えぇっ?! あ、あそこって、夜間処理でいろいろ」
「おう。大変大変。その途中で落ちちまったとさ。電算室の篠田(しのだ)さん、心配になって会社に出てきたら、案の定、落ちていたと。だから、UPSを付けたほうがって、何度も言ってるのになあ」

夜中に牧野課長のケータイがジャンジャン鳴ってな。
参った参ったと言うその声は、さすがに少しばかり疲れていた。

納豆屋さんというのは、二課が担当している客先の一つだった。
納豆をはじめとする大豆製品の製造をしている企業だった。
そこは、配送に絡む翌朝必要となる印刷物の打ち出しや、営業が入力した情報の反映などを、夜間にサーバー機で自動処理していた。

「なんで、こっちは君島課長に頼んで、俺と牧野課長と二人で飛んでいくハメになったよ。とりあえず、奇跡的にサーバーのクラッシュだけは免れたから、どこまで処理が流れたかを調べて、リカバリプロ流して、結果が大丈夫そうか確認したら、もう新聞が配達されてる時間だ。戻ってきたら、君島課長も待機していてくれてな」
「大変でしたね。朝ご飯は?」

なにか買ってきますか? 
そう言いかけて、コーヒーの存在に改めて思い至った。
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