リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「どういう」
「どういうも、こういうも、これが現実だ。もう、いい加減、諦めろって」
判らないお嬢様だなと、小林はこれでもかと息を吐き出し、面倒くさそうに髪を掻き毟った。
「小杉が机の上のもの片付けたところで、牧野課長が怒るもんか。それどころか、上機嫌で礼を言うよ」
「どうしてっ」
「昔からそうなんだよ。この机の上を片付けるのは、小杉の役目なんだよ。ウソだと思うなら、牧野課長が小杉になんて言うか、座ってみてろ。怒ったりなんてするもんか。機嫌のいい顔で礼を言うよ」
小林のその言葉に、美咲の顔は見る間に赤く染まってくる。
悔しそうに噛みしめている唇が、痛々しく見えた。
そんな美咲を見ながら、それでも小林は言葉を続けた。
「あのな。お嬢様には、こいつみたいに、牧野課長を怒らせないで、牧野課長の世話を焼くなんてマネは、どうやってもできないから。いい加減、牧野のことは諦めて、小杉と張り合うのは止めろって。逆立ちしたところで敵わないって」
小林のぞんざいなその言い様に、美咲は細いその体を怒りに震わせていた。
それでも、小林に対しては、それ以上何か言うつもりはないらしい。
大人しくそのまま踵を返して席に着くと、それからはただ明子をきつく睨みつけ続けた。
向けられるその眼差しに明子は辟易しながら、牧野の机の左端にあるキャビネットの一番下の引き出しを開けると、数冊のZ式ファイルを引き抜いた。
「牧野さんは?」
まだ苦虫を潰したような表情のままコーヒーを啜っている小林に、明子はいまさらながらそんな疑問を投げかけた。
それに答えるように、小林は顎で会議室を指した。
「どういうも、こういうも、これが現実だ。もう、いい加減、諦めろって」
判らないお嬢様だなと、小林はこれでもかと息を吐き出し、面倒くさそうに髪を掻き毟った。
「小杉が机の上のもの片付けたところで、牧野課長が怒るもんか。それどころか、上機嫌で礼を言うよ」
「どうしてっ」
「昔からそうなんだよ。この机の上を片付けるのは、小杉の役目なんだよ。ウソだと思うなら、牧野課長が小杉になんて言うか、座ってみてろ。怒ったりなんてするもんか。機嫌のいい顔で礼を言うよ」
小林のその言葉に、美咲の顔は見る間に赤く染まってくる。
悔しそうに噛みしめている唇が、痛々しく見えた。
そんな美咲を見ながら、それでも小林は言葉を続けた。
「あのな。お嬢様には、こいつみたいに、牧野課長を怒らせないで、牧野課長の世話を焼くなんてマネは、どうやってもできないから。いい加減、牧野のことは諦めて、小杉と張り合うのは止めろって。逆立ちしたところで敵わないって」
小林のぞんざいなその言い様に、美咲は細いその体を怒りに震わせていた。
それでも、小林に対しては、それ以上何か言うつもりはないらしい。
大人しくそのまま踵を返して席に着くと、それからはただ明子をきつく睨みつけ続けた。
向けられるその眼差しに明子は辟易しながら、牧野の机の左端にあるキャビネットの一番下の引き出しを開けると、数冊のZ式ファイルを引き抜いた。
「牧野さんは?」
まだ苦虫を潰したような表情のままコーヒーを啜っている小林に、明子はいまさらながらそんな疑問を投げかけた。
それに答えるように、小林は顎で会議室を指した。