リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「君島課長と、なにやら悪巧み中」

けけけ。
小林は人の悪そうな笑い声を上げる。

「そういうのは、打ち合わせって言ってくださいよ。人聞き悪いですよ」

苦笑しながら小林を窘める明子に「牧野課長と、君島課長だぞ。悪巧みに決まってら」と小林は言い、なにも間違っちゃいないというように胸を反らした。

「なあ。いつも不思議なんだけどな。これはどうやって仕分けているんだ?」

ガラガラと、椅子ごと移動して明子の前に来た小林は、三つの山に分けられた書類を、明子の邪魔をしないていどにパラリパラリと捲って眺めながら、明子にそう尋ねた。

「これは、今必要なもので、これは、まだ必要かもしれないもの。こっちのは、もう見ないものですね」
「どうやって、それを見分けるんだよ? 積んであるだけのものを」
「んー。なんとなく。書き込みとか読むと判るって言うか。うまく説明できないんですけど、一応、牧野ルールで積んであるから、それに則って」
「ははは。すげーな。俺もそこそこに付き合い長いけどな、その紙の山の牧野ルールは、まだよく判らねえ」
「なにがどうは、私もよく説明できないんですけど。牧野さんと一緒に仕事していたから、なんとなく、こう、思考回路が読めるというか、発想が判るっていうか」

その感覚を伝えられる、うまい言葉が見つからず、明子は、うーんと唸るしかなかった。
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