リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「まあ、たしかに。仕事はほとんど一緒だったな」
「おかげさまで、この字を判別できるくらい、牧野さんの手書き資料に慣れましたよ」

そう言って、あまりにも達筆すぎる筆で書かれた一枚の紙を、明子はぺらんと小林に見せた。
読めるかよと、小林は額に手を当て呻いた。

「みみずが這ってるだけだろ」
「いやいや。違うんですよ。それが」
「さっぱり、読めん」

まだまだ修行が足りませんね、小林さん。
チッチッチと、舌を鳴らしてしたり顔になった明子の額を、小林は人差し指で弾いた。

「おはよう」

早いな。
聞こえてきたその声に、明子と小林の目が会議室方向に向けられた。

「おはようございます」

のっそりと、会議室から姿を表した君島に、明子は明るい声で挨拶を返した。
そのあとに続いて、少しご機嫌斜めな牧野が姿を見せた。

濃いグレーのスーツに、ブルークレリックシャツを合わせ、牧野にしては珍しく無地のオリーブグリーンのネクタイを締めていた。

最強レベルの戦闘服ではないが、いつもよりは戦闘モード高めのスーツ姿だった。
けれど、会議室から出てきたその顔は、今まで君島にこってりと叱られていましたという文字が、でかでかと書かれている、なんとも子どもじみた情けない顔だった。
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