リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
誰だろうと携帯電話を眺めると、島野の名がそこあった。


(こういうのも、以心伝心っていうのかしら)
(ふふ)


島野の言葉を思い出した矢先に届いたそのメールに、明子は小さな忍び笑いを漏らす。


(マメな人だなあ)
(よっぽどヒマなのね)
(新幹線の中)    


メールを読みながら、そんなことを明子は考えた。

これが、島野から届く本日三通目のメールだった。
お弁当を作っているころに、おはようのメールが届き、会社に着く寸前のころ、東京駅に着いたという旨のメールがついた。
いずれも、本文そのものは短いのだが、必ず写真が添付されていた。

おはようのメールには、図書館近くのポプラ並木の写真が。
東京着を伝えるメールには、かつサンドで有名な某店舗前と分かる写真が。
そこで買ってきたらしいお弁当を、いよいよこれから食べるらしい。
お茶とおいしそうなかつサンドが並べられている写真が添えられていた。

なにを見ているのか気になっている顔で、明子を見上げている牧野に気づいた明子は、笑いながら「島野さんの朝ごはんは、かつサンドみたいですよ」と言って写真を見せた。
一人で旨そうなものをと、悔しがって憤慨するかと思いきや、牧野の顔から、笑みが消えた。
いや、表情がなくなった。
飾られているだけの能面のように、なんの感情も浮かんでいない顔になった。
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