リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「とりあえず、現象が出たときのことを、よく聞いてきてくれ。一応、俺から話は通してあるから、データも吸い上げてきてほしいんだ。こっちでも、木村にいろいろテストさせておくけど、もし問題があるとしたら、ウチのテストじゃ作れないような、なにか特殊なパターンのデータが発生したとしか思えなんだよな」
「ですねー。判りました」

広げた手帳に箇条書きで用件をまとめて書いていると、牧野が手にしたペンで、明子の肘を突付いた。
なんだろうと牧野を見ると、牧野も手帳を開いていた。
見開き頁で、一ヶ月分のカレンダーになっているマンスリーの頁を広げ、今月末の日付の欄をペンで指し示していた。


  この日までに、
  返事くれるか?


余白の欄に、角ばった癖のある字でそう書かれ、明子は一瞬息を詰めて、判りましたというように、小さく頷いた。


(そうだよね)
(そろそろ、ちゃんと考えなきゃね)
(ひとまず、美佳(みか)ちゃんに連絡を入れてみようかな)
(向こうの状況、判らないし)


そんなことを考えていると、明子の頷きを見た牧野は、今度は今月最後の土曜日をペンで指した。
なんだろうと、明子は眉を寄せて見ていると


  山。
  三時に迎えに行く。


今度はツラツラと、小林曰く『ミミズ』のような字で、牧野は余白にそう書いた。
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