リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「じつはな、今、戻ってきたとこに、常務から内線が入ってな。牧野がいるようなら、すぐに上に来させてくれと言うんだ。あれは客先だと答えて用向きを尋ねたら、どうも、あの娘のことで、話をしたかったようでな。なにかあったのか?」
自分が不在の間の出来事を知りたがっている様子の笹原に、明子と小林は目を見合わせて「アレだな」「ですね」と頷きあった。
そんな二人を眺め答えを待っている笹原に、小林は手短に午後のあのやりとりを語り告げた。
「……そうか。また、母親にでも、泣きついたのかもしれんな、あのお嬢様は」
「でも、牧野課長が叱られるようなお話しでは……」
「判らんぞ。自分の都合の言いように、母親には伝えているだろうからな。なんせ、すごい母親なんだ。小杉は会ったことないから、判らんだろうが」
なあと、笹原から同意を求められた小林は、深々と頷き、嫌悪交じりの重いため息を吐き出した。
「親バカにもほどがあるだろうと、呆れ果てるしかないような母親でな。可愛い娘をコケにされたと、今ごろ怒り狂っているかもな」
困ったもんだとぼやく小林に、今までにも、美咲は母親を引っ張り出すようなことがあったのだと想像した明子は、ふと、自分の母親のことを思い出し、さらに重い気分になった。
「今日も、遅いのか?」
「自分はそろそろあがろうかと。小杉主任が、少し残業になります」
「そうか。少し、空模様が怪しい。また昨日みたいに一雨くるかもしれんから、早めに帰れよ」
悪いが、私も先に帰らせてもらうぞと笹原は二人にそう告げて立ち去ろうとして、足を止めた。
「小杉。簿記の試験は、どうするつもりだ?」
「え?」
「勉強会の出欠、そろそろ期限だろ」
そろそろ返事を出せと、最後に一言そう告げて「お疲れ。お先」と、今度こそ笹原は部屋を出た。
自分が不在の間の出来事を知りたがっている様子の笹原に、明子と小林は目を見合わせて「アレだな」「ですね」と頷きあった。
そんな二人を眺め答えを待っている笹原に、小林は手短に午後のあのやりとりを語り告げた。
「……そうか。また、母親にでも、泣きついたのかもしれんな、あのお嬢様は」
「でも、牧野課長が叱られるようなお話しでは……」
「判らんぞ。自分の都合の言いように、母親には伝えているだろうからな。なんせ、すごい母親なんだ。小杉は会ったことないから、判らんだろうが」
なあと、笹原から同意を求められた小林は、深々と頷き、嫌悪交じりの重いため息を吐き出した。
「親バカにもほどがあるだろうと、呆れ果てるしかないような母親でな。可愛い娘をコケにされたと、今ごろ怒り狂っているかもな」
困ったもんだとぼやく小林に、今までにも、美咲は母親を引っ張り出すようなことがあったのだと想像した明子は、ふと、自分の母親のことを思い出し、さらに重い気分になった。
「今日も、遅いのか?」
「自分はそろそろあがろうかと。小杉主任が、少し残業になります」
「そうか。少し、空模様が怪しい。また昨日みたいに一雨くるかもしれんから、早めに帰れよ」
悪いが、私も先に帰らせてもらうぞと笹原は二人にそう告げて立ち去ろうとして、足を止めた。
「小杉。簿記の試験は、どうするつもりだ?」
「え?」
「勉強会の出欠、そろそろ期限だろ」
そろそろ返事を出せと、最後に一言そう告げて「お疲れ。お先」と、今度こそ笹原は部屋を出た。