リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「まだ、微妙なとこなんです」
「そうなの?」
「兄の店で、五年くらい働いている人なんですけど。前から気になっていて。でも、なかなか、デートに誘ったりできなくて。朝、店に寄って、話をするくらいだったんですけど」
「なるほどね。だから、お昼は毎日パンなんだ」

合点が言ったと言うように頷く明子に、沼田は照れたように笑いながら、それでも、一つ、こくんと頷いた。

「兄の店、水曜が定休日で、基本、土日は休みじゃないんですけど。来月の日曜日、兄の用事で店を臨時休業する日があって、思い切って誘ってみたら、オッケーしてくれて。まだまだ、先の話なんですけど、こういうこと、あまり経験ないから」

どんなお店がいいかも、判らなくて。
照れ交じりに必死に喋り続ける沼田に、明子はお勧めのお店かあと頭を捻った。

「ホントにファミレスとか、ファストフードとか。そういう店しか知らなくて。でも、この年で、休みの日に誘っておきながら、そういうところで食事っていうのも……、なんかなって」
「初デートだしね」

そうかあ。そうなんだあ。
ふむふむと頷きながら、お店かぁと明子は頭を捻った。

「私と、趣味が合わないかもしれないし」
「なんとなく、合いそうな気がするんです。うまく説明できないんですけど。小杉さんと話しするようになったら、あの人と似ているなって思うことがよくあって。それに、小杉さんは、いろんな店を知っているって、木村がよく言ってるし」
「そんなことはないと思うんだけど。木村くんは知らなさすぎるなのよ」

沼田の言葉に、明子は苦笑するしかなかった。

「まあ、前はね、確かにいろんな店に行ってたけど。でも、最近は開拓してないしなあ」

どんなとこがいいかなあと、頭の中のデータベースを引っかき回しながら、明子はその日の予定を沼田に尋ねた。
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