リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「原田、兄の店にも、ときどき、買い物に来ていたりするみたいなんで、彼女の顔くらいは知っているんです。付き合っているようなことを言ったりして、彼女になにかされたらと思うと怖いし」

明子も沼田の懸念に、そうねと頷くしかなかった。

「森口さんが、坂下さんからちょっと……、その、嫌がらせ、みたいな事されていたこと、聞きましたか? メールとか、電話とか」
「みたいね。昨日、それらしいことを聞いたわ」
「あれ、もしかしたら、野々村あたりが坂下さんを焚きつけて、やらせていたのかもしれないんです。ウソかホントか、判りませんけど。そんなことを、原田が言っていて。野々村さんって怖いんですよって。もし事実なら、野々村も怖いですけど、そういうことを軽く言える原田も、最近なんか怖くて」

だから、彼女のことは、まだ知られたくなくて。
やや強ばらせた声でそう告げる沼田に、明子は「そうね」と納得しながら「なにかおかしな事があったら、すぐに君島課長に相談しなさいね」と、沼田に言い含めた。
明子な言葉に頷いた沼田は「小杉さんも」と、更に言葉を続けていく。

「あの……。余計なお世話、かもしれないんですけど」

沼田が、一瞬言いよどみながら、思い切ったように明子に忠告めいたことを告げ始めた。

「牧野課長との関係。はっきりさせたほうが、いいと思います。あいつらの嫌がらせ、もっとエスカレートするかもしれません。今みたいな中途半端なままだと、小林係長や君島係長ならともかく、僕らなんかだと、どう小杉さんのことを、あいつらから庇ってやればいいのか、正直、判らなくて。誰が見てもちゃんと判る関係になったほうが、いいです。そのほうが、僕らもどう対応すればいいか考えられるし」

あいつら、ホントに、ちょっと怖いところあるんです。甘く見ないでください。
真剣な沼田の表情と声に、明子は一瞬目を伏せるようにして考え込み、それから、静かにありがとうと沼田に告げた。

「心配してくれて、ありがとう」

うん。ちゃんとします。
明子はにこりと、満面に笑みを作って沼田に頷いた。
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