リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
そのタイミングで、携帯電話にメールが届いた。
島野からのメールだった。
こんな時間になって、やっと、夕飯は食べ始めたらしい。
ぷっくりとしたカキフライの写真が添付されていた。


(おいしそうだなあ)
(いいなあ)


写真をうっとり見つめつつ、自分もまだ夕飯を食べていないことに、明子は今更ながらに気がついた。
十九時ごろ、木村から貰った煎餅を一枚、食べただけだった。


(なんかねえ。胃の具合が変よねえ)
(無理なダイエットなんか、しているつもりはないんだけどなあ)
(なんか、ヘン)
(こんなふうに、食欲がなくなるなんて、初めてかも)
(シクシクするのは、ストレスかなあ。ストレス、だよねえ)


明子はその不可解な体の不調に、首を傾げた。
無理すると体にくるぞと言った小林の言葉が蘇り、ぎくりとなった。
確かに二十代のころのような無理は、もう効かないのかもしれない。
まだまだ若いつもりでいるけれど、肉体はどうあがいても年相応に変わっていく。
気をつけなきゃなと、明子は自分を戒めた。

そんなことを頭の片隅で考えつつ、島野からのメールを眺めている明子の心は、どうしようかと揺れ惑っていた。


-正直に話せ。


小林は、きっぱりとそう断言した。
小林があそこまで言い切る以上、素直にそれに従って、牧野には正直に打ち明けるべきなのだろうと、明子はあのとき観念した。
ただ、その結果で牧野と島野の関係を壊してしまう可能性もあった。
それを思うと、どうすればいいのかと、やはり悩んでしまう。
それが原因で島野の立場が悪くなろうと、それは自業自得だと、そう言ってしまえばそれまでのことだけど、明子にはそこまで割り切ることができなかった。
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