リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「お茶かなんか、淹れてきますか?」
「いいよ。バスがなくなるぞ。さっさと帰れよ」
「お茶を淹れてくる時間くらい、ありますよ」
「大嫌いな牧野さんに、そんなことをしてくれないくていいよ。さっさと帰れ」
拗ねたようなその言いように、明子は口を尖らせて頬を膨らませた。
「冗談で言ったのに」
「そうかよ。悪かったな。冗談も通じない男で」
牧野はやや怒り交じりの声でそう言うと、もう話をするのも面倒というような態度で、明子に対してイスごとくるりと体の向きを変え、背を向けてしまった。
背もたれに体を預けるように深々と腰を下ろして背を向けた牧野は、そのまま黙り込んでしまい、何も言わない。
話をすることすら拒絶するその背中に、明子は視線を落として、下唇をきゅっと噛み締めた。
こういうときの牧野は、なにを言っても無駄だった。
なにも聞いてはくれない。
だから、明子はいつもなにも言えなくなってしまう。
牧野に背を向けられてしまうと、もう、なにも言えなくなってしまう。
(自分だって、ひどいことなんか、いっぱい言うくせに)
(話くらい、聞いてよ)
心の中でそう愚痴る。
それが精一杯だった。
これ以上、その機嫌を損ねてしまったら、明日まで尾を引くほど牧野は不貞腐れて、手がつけられない状態になることはいやでも判る。
時計を見て、あと五分たったら帰ろうと、まだ目を通していない簿記試験の案内等を見てしまおうと、封筒を開けて中の書類を取り出した。
「いいよ。バスがなくなるぞ。さっさと帰れよ」
「お茶を淹れてくる時間くらい、ありますよ」
「大嫌いな牧野さんに、そんなことをしてくれないくていいよ。さっさと帰れ」
拗ねたようなその言いように、明子は口を尖らせて頬を膨らませた。
「冗談で言ったのに」
「そうかよ。悪かったな。冗談も通じない男で」
牧野はやや怒り交じりの声でそう言うと、もう話をするのも面倒というような態度で、明子に対してイスごとくるりと体の向きを変え、背を向けてしまった。
背もたれに体を預けるように深々と腰を下ろして背を向けた牧野は、そのまま黙り込んでしまい、何も言わない。
話をすることすら拒絶するその背中に、明子は視線を落として、下唇をきゅっと噛み締めた。
こういうときの牧野は、なにを言っても無駄だった。
なにも聞いてはくれない。
だから、明子はいつもなにも言えなくなってしまう。
牧野に背を向けられてしまうと、もう、なにも言えなくなってしまう。
(自分だって、ひどいことなんか、いっぱい言うくせに)
(話くらい、聞いてよ)
心の中でそう愚痴る。
それが精一杯だった。
これ以上、その機嫌を損ねてしまったら、明日まで尾を引くほど牧野は不貞腐れて、手がつけられない状態になることはいやでも判る。
時計を見て、あと五分たったら帰ろうと、まだ目を通していない簿記試験の案内等を見てしまおうと、封筒を開けて中の書類を取り出した。