リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「昨日。帰り、バス待ってたら、雨が降ってきて」
「うん」
「……、島野さんに、送ってもらった」
明子の言葉を聞く牧野の表情が、やや険しくなる。
明子の手を握る牧野の手に、力がこもった。
「……で?」
それでなにがあったのだと、牧野は低い声で先を促した。
滅多に聞くことのないその声に、明子は怯みそうになるが堪えた。
「キス、された」
大きくひとつ息を吸い、吐き出す息とともに、明子はそう牧野に告げた。
明子の手の平に、牧野が指がきつく食い込んだ。
その痛みに、思わず、明子の顔は歪みそうになった。
「あとは?」
静かだが、深い怒りが宿るその声に、明子は大きく何度も横に首を振った。
「それだけ」
「あとは?」
「それだけです。ホントに、それだけです」
ピクリピクリと、頬を引き攣らせながらの牧野のきつい眼差しに、明子は懸命に耐えるように顔を上げ、牧野を見つめ続けた。
しばし、二人はそのまま見つめ合う。
信じてと訴える瞳と。
信じたいと願う瞳が。
交差して絡み合う。
「信じて、いいんだな」
どれだけそうしていたのか。
永遠のような、つかの間が過ぎて、静かな、静かな牧野の声が、止まっていた時間を動かした。
明子は、ただひとつ、大きく、大きく頷いた。
「それだけです。ごめんなさい」
許してくれますか?
かすかに震えている声で、まっすぐに、牧野を見つめる明子に、やがて牧野はふうっと息を吐き出した。
「うん」
「……、島野さんに、送ってもらった」
明子の言葉を聞く牧野の表情が、やや険しくなる。
明子の手を握る牧野の手に、力がこもった。
「……で?」
それでなにがあったのだと、牧野は低い声で先を促した。
滅多に聞くことのないその声に、明子は怯みそうになるが堪えた。
「キス、された」
大きくひとつ息を吸い、吐き出す息とともに、明子はそう牧野に告げた。
明子の手の平に、牧野が指がきつく食い込んだ。
その痛みに、思わず、明子の顔は歪みそうになった。
「あとは?」
静かだが、深い怒りが宿るその声に、明子は大きく何度も横に首を振った。
「それだけ」
「あとは?」
「それだけです。ホントに、それだけです」
ピクリピクリと、頬を引き攣らせながらの牧野のきつい眼差しに、明子は懸命に耐えるように顔を上げ、牧野を見つめ続けた。
しばし、二人はそのまま見つめ合う。
信じてと訴える瞳と。
信じたいと願う瞳が。
交差して絡み合う。
「信じて、いいんだな」
どれだけそうしていたのか。
永遠のような、つかの間が過ぎて、静かな、静かな牧野の声が、止まっていた時間を動かした。
明子は、ただひとつ、大きく、大きく頷いた。
「それだけです。ごめんなさい」
許してくれますか?
かすかに震えている声で、まっすぐに、牧野を見つめる明子に、やがて牧野はふうっと息を吐き出した。