リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「カレーランチって、なんだっ なんだよっ」

食べ物の話になったとたん、豹変したように、今まで漂わせていた淫猥な雰囲気などどこへやら、あっという間に、そんなものはどこかに吹き飛ばし、お腹を空かせた子どものような顔で騒ぎ出した牧野に、明子はべーっと舌を出した。

「土曜の夜に、久しぶりに、チキンカレーを作ろうかなって思って。そしたら、今日のお詫びも兼ねて、牧野さんを日曜のお昼ご飯に、招待してあげようって思ってたのにぃ」

でも、呼んであげませんもん。ふんだ。
そう言って、またつんとそっぽを向いた明子は、思いついたばかりの日曜のプランを、楽しそうに語って聞かせた。

「土曜の夜に作って。一晩寝かせたカレーで、一人でおいしいランチにしようっと。半熟卵のせるんだー。ラッシーも作って。あとはブロッコリーと海老で、サラダとかも作ろうかな。あー。ポテトサラダでもいいかなあ。スープは、なにがいいかなあ。野菜たっぷりのあっさりコンソメかな。トマトとかキュウリとかで、ピクルスも作っておこーっと。あー。楽しみー」
「俺も食うっ」

俺も食うぞっ
勝手にそう決め込んで喚く牧野に、明子は「だって」と、頬をぷくりと膨らませる。

「許してくれないなら、招待できないですもん。怒ってる人、お家にあげるのは、怖いですもん。だから、一人で食べます」
「お前、汚ねえぞっ」

足をばたばたとさせて悔しがる牧野は「大嫌いと、見合いの話は許してやるっ」と、高飛車に明子に告げた。

「だから、食わせろっ」
「えー。だって」
「島野の件はダメだ。俺の家に来るまで許さねえ」

それだけは絶対に譲れんと、意固地になったように言い放つ牧野に、明子が仕方ないと折れた。
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