リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「大丈夫ですか?」
「ん。よく寝たから」
「よく寝たって。三十分くらいですよ?」
「ぐっすり寝たから、頭はシャキっとしたよ」
大丈夫だよと笑う牧野に、明子は渋々納得したように顔で「気をつけてくださいね」と言いながら、運転席を明け渡した。
運転席に乗り込む寸前、牧野は明子を抱き寄せた。
突然のことに緊張した明子の体に、くぅっと、力が入っていった。
牧野は、体を堅くした明子に対して「そんなに、緊張するなよ」と囁きながら、明子の耳元で笑う。
-早く、慣れろよ
牧野の楽しそうな忍び笑い混じりの囁きが癪に障りながらも、明子は牧野の腕の中で息を詰めているしかなかった。
緊張するなと言われても、男性に、こんなふうに抱きしめられること自体が、余りにも久しぶりすぎて、なかなか体がそれに慣れてくれない。
牧野の体温を感じるたびに、息が詰まりそうになる。
「もう、忘れろなんて言わねえよ」
ぼそりと告げられた言葉に、明子は一瞬眉を寄せ、何のことかを理解した明子は困ったような顔で牧野を見た。
牧野はにたりと笑い、言葉を続けた。
「忘れさせてやるから、無理に忘れなくてもいいさ」
ちゃんと忘れさせてやる。
くつくつと楽しそうに笑う牧野に、明子は小さな声で「バカ」と呟き、小さく揺れているその肩に顔を埋めた。
「今日からは、浮気だからな」
他の男とこんなことするなよ。
言い含めるように、明子の耳元でそう囁く甘い声に、体が震える。
「ん。よく寝たから」
「よく寝たって。三十分くらいですよ?」
「ぐっすり寝たから、頭はシャキっとしたよ」
大丈夫だよと笑う牧野に、明子は渋々納得したように顔で「気をつけてくださいね」と言いながら、運転席を明け渡した。
運転席に乗り込む寸前、牧野は明子を抱き寄せた。
突然のことに緊張した明子の体に、くぅっと、力が入っていった。
牧野は、体を堅くした明子に対して「そんなに、緊張するなよ」と囁きながら、明子の耳元で笑う。
-早く、慣れろよ
牧野の楽しそうな忍び笑い混じりの囁きが癪に障りながらも、明子は牧野の腕の中で息を詰めているしかなかった。
緊張するなと言われても、男性に、こんなふうに抱きしめられること自体が、余りにも久しぶりすぎて、なかなか体がそれに慣れてくれない。
牧野の体温を感じるたびに、息が詰まりそうになる。
「もう、忘れろなんて言わねえよ」
ぼそりと告げられた言葉に、明子は一瞬眉を寄せ、何のことかを理解した明子は困ったような顔で牧野を見た。
牧野はにたりと笑い、言葉を続けた。
「忘れさせてやるから、無理に忘れなくてもいいさ」
ちゃんと忘れさせてやる。
くつくつと楽しそうに笑う牧野に、明子は小さな声で「バカ」と呟き、小さく揺れているその肩に顔を埋めた。
「今日からは、浮気だからな」
他の男とこんなことするなよ。
言い含めるように、明子の耳元でそう囁く甘い声に、体が震える。