リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「備品ってことで、物品購入してもらいましょうか、耳栓」
「俺、イヤホンでいいですよ。そしたら、音楽聞いてますから」

川田の言葉に食いついた木村の言葉に、渡辺も便乗してそんなことを言う。
調子に乗るなと、小林は木村に消しゴムをコツンとぶつけた。

「さすが、野球をしてるから、コントロール抜群ですよね、係長」

ぶつけられた消しゴムを小林に返しながら、感心したようにそう言う木村に「そういう問題じゃないだろう」と、村田まで笑い出した。

「主任。僕、キャッチボールのテスト、合格ですかね。消しゴム、キャッチできましたよ」
「残念ながら、それはキャッチボールとは言えません」
「テスト?」

なんのことだと眉間に皺をたてる小林に、話すと長いことになりますからと、明子は笑って誤魔化そうとしたが、それより先に木村の口が回り始めた。

「坂下さんが、主任に林田派なんだろって、難癖付けて絡んできたら、主任、自分は牧野派だってそう言い返したんです。僕もそれに入れてくださいって言ったら、試験があるって。君島課長と飲み比べして、小林係長とキャッチボールしなきゃって」

最初のうちこそ顔をしかめていた小林も、最後は苦笑いを浮かべて明子を見ていた。
バカか、お前はと言うからかい混じりの小林の声が聞こえるようで、明子は鼻の頭をばつが悪そうに掻いた。

「残念だったな、木村。まだ試験があるぞ」
「えーっ まだ、あるんですか」
「おう。百本ノック受けて百本ダッシュして、養成ギプスを付けて、メジャーリーグを目指すんだ」

がははと笑いながらの小林の言葉に「巨人の星ですか」と川田はつっこみ、「なんですか、それ?」と岡島は目をぱちくりとさせた。
ジェネレーションギャップに挟まれたと、村田は二人の間で笑っていた。
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