リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「係長。それは、野球チームの入団試験にじゃ……」
「それが違うんだな。これは、試験の為の体力作りだ。そうやって体力をつけて、デカい仕事をやっつけてくるっていうのが、最終試験だ」
「うひゃー。そういうオチかー」
わきゃきゃと頭を抱える木村に、小林はにんまりと笑う。
「ということで。豆腐屋は、村田とお前で頑張れ」
よしと言って笑う小林に、木村はまた「うひゃーっ」と声を上げ、村田が「よろしくな」と向かい側で手を振っていた。
そんな光景を、明子は必死に笑いを噛み殺しながら眺めていた。
同じように、笑いを堪えようとして失敗した渡辺の耳が、カツカツと廊下に響く足音を拾ったらしい。
出入り口に近い分、渡辺は廊下からの物音には敏感だった。
ヒメさまご一行様のご帰還だと、うんざりしたような声でぼやき、その頬に浮かんでいた笑みを消した。
和やかになり始めていた場の雰囲気が、瞬く間に、暗く淀んでいった。
そんな室内の雰囲気などまったく気づくことなく、甲高い笑い声をあげながら戻ってきた美咲たちは、そこにある小林の姿に気づいて、失敗したというような表情を浮かべながら、スタスタと席に戻った。
幸恵は、少し慌てふためいているようだった。
「小杉主任。課長、今日は戻るって言っていたか?」
突然、小林が思い出したように、明子にそう尋ねてきた。
「へ? 聞いてないんですか?」
「客先に直行とは、聞いているんだけどな。詳しいことは、小杉に言ってあるって」
牧野の話になったとたん、顔をこちらに向けた美咲の目がきつくなった。
その目に、明子は暗く沈んでいくような気分になった。
(また、頭痛の種が、増えちゃったかな)
(もう、今日は限界、なんですけど?)
(というか、まあ、今日は多少、自分で頭痛の種蒔きをしちゃったんだけどね)
(だってさ、使えるものは使えって、そう言ったもん、牧野)
(だから、その教えに、とっても素直に従ったまでだもん)
(えへへ)
面倒くさいと思いつつ、美咲に対する優越感にも浸りながら、美咲の視線を意図的に無視して、明子はディスプレイを見つめたまま、事務的な口調で小林に答えた。
「それが違うんだな。これは、試験の為の体力作りだ。そうやって体力をつけて、デカい仕事をやっつけてくるっていうのが、最終試験だ」
「うひゃー。そういうオチかー」
わきゃきゃと頭を抱える木村に、小林はにんまりと笑う。
「ということで。豆腐屋は、村田とお前で頑張れ」
よしと言って笑う小林に、木村はまた「うひゃーっ」と声を上げ、村田が「よろしくな」と向かい側で手を振っていた。
そんな光景を、明子は必死に笑いを噛み殺しながら眺めていた。
同じように、笑いを堪えようとして失敗した渡辺の耳が、カツカツと廊下に響く足音を拾ったらしい。
出入り口に近い分、渡辺は廊下からの物音には敏感だった。
ヒメさまご一行様のご帰還だと、うんざりしたような声でぼやき、その頬に浮かんでいた笑みを消した。
和やかになり始めていた場の雰囲気が、瞬く間に、暗く淀んでいった。
そんな室内の雰囲気などまったく気づくことなく、甲高い笑い声をあげながら戻ってきた美咲たちは、そこにある小林の姿に気づいて、失敗したというような表情を浮かべながら、スタスタと席に戻った。
幸恵は、少し慌てふためいているようだった。
「小杉主任。課長、今日は戻るって言っていたか?」
突然、小林が思い出したように、明子にそう尋ねてきた。
「へ? 聞いてないんですか?」
「客先に直行とは、聞いているんだけどな。詳しいことは、小杉に言ってあるって」
牧野の話になったとたん、顔をこちらに向けた美咲の目がきつくなった。
その目に、明子は暗く沈んでいくような気分になった。
(また、頭痛の種が、増えちゃったかな)
(もう、今日は限界、なんですけど?)
(というか、まあ、今日は多少、自分で頭痛の種蒔きをしちゃったんだけどね)
(だってさ、使えるものは使えって、そう言ったもん、牧野)
(だから、その教えに、とっても素直に従ったまでだもん)
(えへへ)
面倒くさいと思いつつ、美咲に対する優越感にも浸りながら、美咲の視線を意図的に無視して、明子はディスプレイを見つめたまま、事務的な口調で小林に答えた。