リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
十九時を少し回った時刻に、今日の仕事は切り上げて明日の準備を終えた明子は、まだ仕事中だった小林や川田たちに退社の挨拶をして会社を出た。
そうして、やや風はあるものの、きれいな星空が広がっている夜のバス停で、一人、ぽつんと立っていた。
無意識のうちに、疲れたなあと声にはかすれた声で呟いていた。
「あ。主任。一緒ですねー」
お疲れ様でーすと明るい元気な声が聞こえ、ぼんやりと通りを行く車を眺めていた明子はその声の主をみた。
木村だった。
明子より少し先に会社を出た木村が、明子が立っているバス停に向かって、小走り気味の軽い足取りで歩いてきた。
市内に住んでいる木村は、明子と同じくバス通勤だった。自宅から五分くらいの場所にバス会社の車庫があり、その車庫前にあるバス停を利用している。
そのバス停を始発、終着にしているバスも多いらしい。
だから、朝は座ってこられるし、帰りに寝ちゃっても安心なんですよと、システム部に異動してきて間もないころに話してくれたことがあった。
今日の木村はミニタリー風のジャケットにコットンパンツという、ややカジュアルな服装で、そこにスポーツメーカーの名前が入ったショルダーバックを斜め掛けしていた。その姿は社会人というより、まだ学生のようなに見える。
この子が結婚して家庭を持つなんてねえと、明子は何とも言えない心地で、まだ子どものような雰囲気を漂わせている木村を眺めた。
「どうしたの? バス、向こうでしょ」
駅からバスに乗ってくる明子と、バス会社の車庫のほうからバスに乗る木村は、朝と晩で利用しているバス停が反対になる。
だから、明子が道の反対側にあるバス停を指さして不思議そうにそう尋ねると「今日は、駅のほうに用があって」と、木村は答えた。
「彼女の勤め先に、挨拶に行ってこようかなって」
「ああ。東口のほうなんだったっけ」
前に聞いた話を思い出し、なるほどと明子は頷いた。
よく見れば、木村のその手には、会社からバス停に来る途中にある和菓子屋の紙袋があった。
「えらいえらい。手ぶらじゃないわね」
それを褒めそやす明子に「もう、大人ですよ、僕」と、木村は口を尖らせた。
そうして、やや風はあるものの、きれいな星空が広がっている夜のバス停で、一人、ぽつんと立っていた。
無意識のうちに、疲れたなあと声にはかすれた声で呟いていた。
「あ。主任。一緒ですねー」
お疲れ様でーすと明るい元気な声が聞こえ、ぼんやりと通りを行く車を眺めていた明子はその声の主をみた。
木村だった。
明子より少し先に会社を出た木村が、明子が立っているバス停に向かって、小走り気味の軽い足取りで歩いてきた。
市内に住んでいる木村は、明子と同じくバス通勤だった。自宅から五分くらいの場所にバス会社の車庫があり、その車庫前にあるバス停を利用している。
そのバス停を始発、終着にしているバスも多いらしい。
だから、朝は座ってこられるし、帰りに寝ちゃっても安心なんですよと、システム部に異動してきて間もないころに話してくれたことがあった。
今日の木村はミニタリー風のジャケットにコットンパンツという、ややカジュアルな服装で、そこにスポーツメーカーの名前が入ったショルダーバックを斜め掛けしていた。その姿は社会人というより、まだ学生のようなに見える。
この子が結婚して家庭を持つなんてねえと、明子は何とも言えない心地で、まだ子どものような雰囲気を漂わせている木村を眺めた。
「どうしたの? バス、向こうでしょ」
駅からバスに乗ってくる明子と、バス会社の車庫のほうからバスに乗る木村は、朝と晩で利用しているバス停が反対になる。
だから、明子が道の反対側にあるバス停を指さして不思議そうにそう尋ねると「今日は、駅のほうに用があって」と、木村は答えた。
「彼女の勤め先に、挨拶に行ってこようかなって」
「ああ。東口のほうなんだったっけ」
前に聞いた話を思い出し、なるほどと明子は頷いた。
よく見れば、木村のその手には、会社からバス停に来る途中にある和菓子屋の紙袋があった。
「えらいえらい。手ぶらじゃないわね」
それを褒めそやす明子に「もう、大人ですよ、僕」と、木村は口を尖らせた。