リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
明子が利用している駅の改札口は西口のため、その店を見たことはないのだが、煉瓦と白壁の可愛らしい外装で、綺麗に手入れされている小さな庭が見事な個人店舗の美容院らしい。
クリスマスが近くなると、その庭は色とりどりのたくさんの電球で装飾され、その見事なイルミネーシュンを見るために、わざわざ足を延ばして立ち寄っていく者も少なくないらしい。
庭木を飾るだけでなく、大きめのサンタクロースやトナカイなどの置物もあるため、それらの置物と並んだ我が子を写真に撮って行く親もいるそうだ。
毎年、十二月になると飾り付けをするのだと教えてくれた木村に、今年は見に行ってみようかと言ったのは先月のことだった。

「お式を挙げることを店長さんに伝えたら、その日はお店を臨時休業にして、お店の人みんなで参列してくれるって、言ってくれて。みんな、すごい喜んでくれたって」
「そう。よかったわね」

にこにこと、嬉しそうにそんな報告をする木村に、明子の顔もにこにこと綻んでいく。
嬉しいことを嬉しいと素直を伝える木村と話しをしていると、塞ぎ込んでいた明子の気持ちも晴れていくようだった。

「ええ。店長さんと彼女と、あと二人っていう店なんで、休みにしましょって。今日は早くあがれたから、差し入れ持って挨拶をしてこようかなって」
「まだお店にいるんだ?」
「店は十九時で閉めるんですけど、掃除とかいろいろあるし。水曜日は研修っていうか、勉強会みたいなことしているんで、だいたい、みんな遅くまで残って、カットの練習とかしているですよね」
「ああ。そうか」

そうだよね、技術を磨くって大変だもんねえと、明子も納得したように頷いた。
木村も明子のそんな言葉に、大きく頷いた。

「そうですね。水曜じゃなくても、けっこう、仕事が終わってから練習していたりで、遅くまで残っていたりするみたいです。どんな仕事でも、スキルとか技術をあげたいって思ったら、やっぱり勉強しなきゃですよね」

子どものころは、大人になっても勉強するなんて思わなかったなあと、しみじみと言う木村に「まったくよね」と、明子も相槌を打った。
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