リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「原田さんって、入社したときは、どんな感じだったの?」

明子のその問いかけに、木村は首を捻って昔を思い出しながら答えた。

「んー。そうですねえ。仕事熱心なタイプじゃなかったです。なんか、仕方なく働いているみたいなところは、確かに、ありました。でも、今よりはずっとマシでしたよ」

入社したころのことを思い返しながら、木村は静かな声で喋り出した。

「会社に入ったころから、結婚したら仕事は辞めるって言っていたし、早く結婚したいって、口癖みたいに言ってましたけど」
「そうなんだ」
「ただ、あんなふうに結婚願望がめちゃくちゃ強くなったのは、三宅(みやけ)が結婚してからじゃないかなあ」
「三宅?」
「同期の女子です。営業の伊東さんと、去年の春に結婚したヤツですよ」
「ああ。そう言えば、伊東さん。一回り以上年下のシステム部の女の子と結婚したって、聞いたかも」

回り回ってきたそんな話を思い出した明子は、はいはいと木村の言葉に頷いた。

「木村くんと、同期の子だったんだ」
「そうです。僕と原田と三宅の三人が第二に配属されて、原田は一課で、僕と三宅が二課に入ったんですけど。多分、ここにきたときは、三人の中では一番、仕事ができるヤツでした」

空を見つめている目を少しだけ懐かしそうに細めて、木村は訥々といつもより少し低めのトーンで喋り続けた。

「原田とは真逆で、結婚しても仕事は続けたいって言っていたし、結婚も三十過ぎてからでいいかなあなんて、そう言っていたようなヤツでした」

へえ、そうなんだと明子は小さな相槌を打ちながら、木村の話しに耳を傾けた。
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