リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「渡辺から聞いた話なんですけど」
「あー。井上さんたちは、いちおう、同期入社だもんね、渡辺くん。私たちより、よく見ているわよね、彼女たちのこと」
「そうですね。ヒメはタバコは吸わないんてすけど、野々村たちはタバコを吸うんで、ときどき、三人だけで喫煙室とかに集まっているようなことがあったらしいです、研修期間とか。渡辺も、会社は入ったころは吸っていたんで、そのころは喫煙室で、あいつらと居合わせることがよくあったそうで。そういうところで、ときどき、ヒメの陰口で盛り上がっていたらしいです」
「陰口? なにを言っていたの? あの子たち」
「なんか……、世間知らずのお嬢様をからかうと楽しいだとか、利用できる限り利用しなきゃなとか。聞いてて呆れたって。自分の力じゃどこにも就職できなくて、ヒメのおかげでやっと就職できたくせに。よくそんなふうに言えるなあって」
「ホントにね。だいたい、なんなの、その。利用できる限り利用するって」
眉間に縦皺を刻んで憤っている明子に、木村も顔をしかめながら渡辺から聞きかじった話を、淡々と明子に聞かせていく。
「新藤が普段乗り回している車、ヒメの車らしいですよ。ヒメのために運転手を買って出ているみたいな顔をしているけど、ヒメから鍵も車も預かって、好き勝手に使っているんだって。それで、ガソリン代だのなんだのは全部、ヒメに払わせているって。野々村たちだって、服だのバックだの、お揃いで一緒に持ちたいとか言って、よくヒメに買わせているとか。そういうことらしいです」
もはや頭痛の種にしかならない話に、明子はガクリと項垂れて、やりきれなさいっぱいのため息を吐きこぼした。
「だから渡辺くん。井上さんよりも、野々村さんたちのことを嫌っているんだ」
「判ります?」
「うん。最近、なんとなくね、気づいた」
美咲が牧野のことで騒ぎ始めると、渡辺は忌々しそうな顔で野々村たちを睨んでいることが何度かあった。
新藤に辛辣なことを言っている場面も、今まで何度か見てきた。
木村の話しを聞いて、その理由がやっと明子にも理解できた。
「もし、会社に入ったきたのがヒメだけだったら、少しは違ったかもしれませんね。牧野さん、牧野さんって、確かに煩かっただろうけど。それでも、キャアキャア騒いでいるだけで、今みたいな実害はなかったんじゃないかなあ」
「まあ。目をハートにしているくらいならね。害にはならなかったかも」
「確かに、パパママと甘えているところはあったけど、入社したころは、あんなふうに父親の名前を使ったり、母親を呼び出したりするようなことはなかったそうですよ」
「そうなの?」
「渡辺がみていた限りでは。なのに、野々村にたちがあれこれヒメに吹き込んで、妙な入れ知恵して、井上美咲の名前を使えば、この会社ではなにでも自由になって、なにをしても叱られないって、ヒメにそう思い込ませて。いつの間にか、なにかあるとすぐに父親の名前を持ちだしたり、母親を呼び出して無理を通させたりするようになったって」
「洗脳されちゃったわけね」
「みたいです。ヒメみたいな甘ったれも嫌いだけど、野々村たちみたいな連中は、見ているだけでも虫唾が走るくらいイヤだって、渡辺はずいぶん、怒ってました」
「なんで、そんな子たちを友だちにしちゃったのかしら、井上さんも。というか、あのお母様が、よく黙って許しているわね、そんな子たち」
「態度が豹変するそうですよ。ママゴンの前だと。ヒメのこと、とにかく褒めちぎって、おだてまくるんだって」
「……、光景が目に浮かぶかも」
「まあ、そんなだから、あいつらがホントに仲がいいのか悪いのかは、正直、よく判らないです、僕も」
「そうね。私もますます判らなくなったわ」
聞かされた彼女たちのその実態に、明子はため息が止まらなくなる。いやな話だと、気分が憂鬱になってきた。
「あー。井上さんたちは、いちおう、同期入社だもんね、渡辺くん。私たちより、よく見ているわよね、彼女たちのこと」
「そうですね。ヒメはタバコは吸わないんてすけど、野々村たちはタバコを吸うんで、ときどき、三人だけで喫煙室とかに集まっているようなことがあったらしいです、研修期間とか。渡辺も、会社は入ったころは吸っていたんで、そのころは喫煙室で、あいつらと居合わせることがよくあったそうで。そういうところで、ときどき、ヒメの陰口で盛り上がっていたらしいです」
「陰口? なにを言っていたの? あの子たち」
「なんか……、世間知らずのお嬢様をからかうと楽しいだとか、利用できる限り利用しなきゃなとか。聞いてて呆れたって。自分の力じゃどこにも就職できなくて、ヒメのおかげでやっと就職できたくせに。よくそんなふうに言えるなあって」
「ホントにね。だいたい、なんなの、その。利用できる限り利用するって」
眉間に縦皺を刻んで憤っている明子に、木村も顔をしかめながら渡辺から聞きかじった話を、淡々と明子に聞かせていく。
「新藤が普段乗り回している車、ヒメの車らしいですよ。ヒメのために運転手を買って出ているみたいな顔をしているけど、ヒメから鍵も車も預かって、好き勝手に使っているんだって。それで、ガソリン代だのなんだのは全部、ヒメに払わせているって。野々村たちだって、服だのバックだの、お揃いで一緒に持ちたいとか言って、よくヒメに買わせているとか。そういうことらしいです」
もはや頭痛の種にしかならない話に、明子はガクリと項垂れて、やりきれなさいっぱいのため息を吐きこぼした。
「だから渡辺くん。井上さんよりも、野々村さんたちのことを嫌っているんだ」
「判ります?」
「うん。最近、なんとなくね、気づいた」
美咲が牧野のことで騒ぎ始めると、渡辺は忌々しそうな顔で野々村たちを睨んでいることが何度かあった。
新藤に辛辣なことを言っている場面も、今まで何度か見てきた。
木村の話しを聞いて、その理由がやっと明子にも理解できた。
「もし、会社に入ったきたのがヒメだけだったら、少しは違ったかもしれませんね。牧野さん、牧野さんって、確かに煩かっただろうけど。それでも、キャアキャア騒いでいるだけで、今みたいな実害はなかったんじゃないかなあ」
「まあ。目をハートにしているくらいならね。害にはならなかったかも」
「確かに、パパママと甘えているところはあったけど、入社したころは、あんなふうに父親の名前を使ったり、母親を呼び出したりするようなことはなかったそうですよ」
「そうなの?」
「渡辺がみていた限りでは。なのに、野々村にたちがあれこれヒメに吹き込んで、妙な入れ知恵して、井上美咲の名前を使えば、この会社ではなにでも自由になって、なにをしても叱られないって、ヒメにそう思い込ませて。いつの間にか、なにかあるとすぐに父親の名前を持ちだしたり、母親を呼び出して無理を通させたりするようになったって」
「洗脳されちゃったわけね」
「みたいです。ヒメみたいな甘ったれも嫌いだけど、野々村たちみたいな連中は、見ているだけでも虫唾が走るくらいイヤだって、渡辺はずいぶん、怒ってました」
「なんで、そんな子たちを友だちにしちゃったのかしら、井上さんも。というか、あのお母様が、よく黙って許しているわね、そんな子たち」
「態度が豹変するそうですよ。ママゴンの前だと。ヒメのこと、とにかく褒めちぎって、おだてまくるんだって」
「……、光景が目に浮かぶかも」
「まあ、そんなだから、あいつらがホントに仲がいいのか悪いのかは、正直、よく判らないです、僕も」
「そうね。私もますます判らなくなったわ」
聞かされた彼女たちのその実態に、明子はため息が止まらなくなる。いやな話だと、気分が憂鬱になってきた。