リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
幸恵のあのイヤの笑い方を思い出すと、陰々とした気分なる。
美咲の窮地や不幸が楽しくてたまらないというような、そんな浅ましい顔だった。
これまでも、明子にやり込められていた美咲のことを、幸恵はあんな顔で嗤っていたのかと思うと、明子の背筋を冷たいものが流れ、どうしようもなく暗い気持ちになった。
幸恵だけではない。
少なくとも、美咲の味方だと思っていた新藤たちでさえ、美咲のことを内心では嘲笑っていたのかと思うと、気持ちがどんどん沈んでいく。
(あー。ヤタヤダ)
(ホントに、ヤダ)
そのまま、どろりとした汚泥で作られた底なし沼に飲み込まれてしまうそうになっていた明子の気持ちを、木村のいつもの元気な声が明るい場所に引き戻した。
「原田。明日になって、自分も打ち合わせに行くーっなんて、騒がないといいですねえ」
「それはないと思いたいなあ。野木主任に釘刺されたんだし」
「でも、主任と沼田さんが一緒にいるのがイヤで、あんなに騒いでいるんだから、判りませんよ? 昨日から、いきなりですもん。あんなに沼田さん、沼田さんっていう、猛アタックが始まったの。まあ、アピールは前からしてたけど。わざわざ、お兄さんの店まで買い物に行ったりして。でも、昨日から豹変しすぎですよね」
うわ、化けたって引きましたもんと、けらけらと笑い出す木村と目を合わせて、明子も「ホントよねえ」と、乾いた笑い声をあげた。
「明日は、大人しくなってくれるといいなあ」
そろそろお耳が痛いわと言う明子に、木村は感心したような声をあげる。
「主任。ホント、我慢強いですねえ。僕、あいつが来ると左の耳にティッシュ詰めてましたよ」
「ごめんねえ。うるさかっでしょ」
「同期の桜なんで堪えます。原田のバカって、腹の底では喚いてましたけど」
「大丈夫。私なんてしょっちゅう、牧野にバカって、声に出して言っているから」
さすが、主任、すげー、あははと、木村は楽しそうな笑い声をあげた。
美咲の窮地や不幸が楽しくてたまらないというような、そんな浅ましい顔だった。
これまでも、明子にやり込められていた美咲のことを、幸恵はあんな顔で嗤っていたのかと思うと、明子の背筋を冷たいものが流れ、どうしようもなく暗い気持ちになった。
幸恵だけではない。
少なくとも、美咲の味方だと思っていた新藤たちでさえ、美咲のことを内心では嘲笑っていたのかと思うと、気持ちがどんどん沈んでいく。
(あー。ヤタヤダ)
(ホントに、ヤダ)
そのまま、どろりとした汚泥で作られた底なし沼に飲み込まれてしまうそうになっていた明子の気持ちを、木村のいつもの元気な声が明るい場所に引き戻した。
「原田。明日になって、自分も打ち合わせに行くーっなんて、騒がないといいですねえ」
「それはないと思いたいなあ。野木主任に釘刺されたんだし」
「でも、主任と沼田さんが一緒にいるのがイヤで、あんなに騒いでいるんだから、判りませんよ? 昨日から、いきなりですもん。あんなに沼田さん、沼田さんっていう、猛アタックが始まったの。まあ、アピールは前からしてたけど。わざわざ、お兄さんの店まで買い物に行ったりして。でも、昨日から豹変しすぎですよね」
うわ、化けたって引きましたもんと、けらけらと笑い出す木村と目を合わせて、明子も「ホントよねえ」と、乾いた笑い声をあげた。
「明日は、大人しくなってくれるといいなあ」
そろそろお耳が痛いわと言う明子に、木村は感心したような声をあげる。
「主任。ホント、我慢強いですねえ。僕、あいつが来ると左の耳にティッシュ詰めてましたよ」
「ごめんねえ。うるさかっでしょ」
「同期の桜なんで堪えます。原田のバカって、腹の底では喚いてましたけど」
「大丈夫。私なんてしょっちゅう、牧野にバカって、声に出して言っているから」
さすが、主任、すげー、あははと、木村は楽しそうな笑い声をあげた。