リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「でも、あるていど成長すれば、現実が判ってくるでしょ、子どもも。判って当然の年になっても、本気でそんなことを言っていたら、親だって不安になると思うのよね。でも、井上さんのお母様は、成長しても分別のないこと言っている娘に、可愛い可愛いって言い続けてきちゃったんだろうなあって。美咲ちゃんは、なんて可愛いことを言うのかしらって。本当に可愛い子って。そうやって、いつまでも子どものままでいてくれる娘に、可愛い可愛いって言い続けて、なんでも笑って許していたんだろうなあって」
「ありそうですね」
それなら想像できますと言う木村に、明子は言葉を続ける。
「牧野さんとのことも、最初は、井上さんの願望交じりの妄想を、ただ楽しく話していただけなんじゃないのかな。でも、毎日毎日話しているうちに、それが本当のことみたいに思えてきて。お母様はそれを真剣に聞いて真剣に答えてくれるから、ウソもどんどんエスカレートして、自分でも止められなくなっちゃっんじゃないのかなあ」
そんな感じがするの。
そんなふうに美咲と美咲の母親の話しをしながら、明子の脳裏には姉と母が思い浮かんだ。
あの二人も、少しだけ、そんなところがあるなあと、そんなことを考えた。
「私ね、母とそんなにうまくいってないから、正直、あの母娘の関係はあまり理解できないけど、でも、そういう構図は見えたような気がしたわ」
今日の一件で。
小さく頷く明子に、木村もなるほどなあという顔で頷いて、ややあってからぼそりと尋ねてきた。
「お母さんと」
「ん?」
「あんまり、うまくいってないんですか?」
その問いかけに、明子は一瞬目を伏せて、そうねと頷いた。
「そんなに良好じゃないわね」
「結婚が、だめになったから。とか?」
「違うわ」
「お見合いを、断ってるから。ですか?」
「ううん。違う」
気遣わしげに明子を見ている木村に、明子は短く一つくすりと笑った。
「違うわ。もっと前から」
前を見つめる明子の目には、なんの感情も浮かんでいなかった。
「多分。私が生まれたときから。私と母は、うまくいってなかったの」
薄暗い車内で、静かにそう告げる明子に、木村はなにも言わず黙り込んだ。
「ありそうですね」
それなら想像できますと言う木村に、明子は言葉を続ける。
「牧野さんとのことも、最初は、井上さんの願望交じりの妄想を、ただ楽しく話していただけなんじゃないのかな。でも、毎日毎日話しているうちに、それが本当のことみたいに思えてきて。お母様はそれを真剣に聞いて真剣に答えてくれるから、ウソもどんどんエスカレートして、自分でも止められなくなっちゃっんじゃないのかなあ」
そんな感じがするの。
そんなふうに美咲と美咲の母親の話しをしながら、明子の脳裏には姉と母が思い浮かんだ。
あの二人も、少しだけ、そんなところがあるなあと、そんなことを考えた。
「私ね、母とそんなにうまくいってないから、正直、あの母娘の関係はあまり理解できないけど、でも、そういう構図は見えたような気がしたわ」
今日の一件で。
小さく頷く明子に、木村もなるほどなあという顔で頷いて、ややあってからぼそりと尋ねてきた。
「お母さんと」
「ん?」
「あんまり、うまくいってないんですか?」
その問いかけに、明子は一瞬目を伏せて、そうねと頷いた。
「そんなに良好じゃないわね」
「結婚が、だめになったから。とか?」
「違うわ」
「お見合いを、断ってるから。ですか?」
「ううん。違う」
気遣わしげに明子を見ている木村に、明子は短く一つくすりと笑った。
「違うわ。もっと前から」
前を見つめる明子の目には、なんの感情も浮かんでいなかった。
「多分。私が生まれたときから。私と母は、うまくいってなかったの」
薄暗い車内で、静かにそう告げる明子に、木村はなにも言わず黙り込んだ。