リスタート ～最後の恋を始めよう～ 【前編】

おからをフライパンで乾煎りして、水分を飛ばす。
生のままでも問題はないけれど、明子はたいてい、おからはまず乾煎りして水分をあるていど飛ばすことにしている。
乾煎りすると、重量がけっこう変わる。
だから、計量が必要はものを作る場合は乾煎りしてから計量することにしている。
パラパラになったところで、火を止めて冷ましておく。

買ってきたパセリを細かく刻む。


（パセリって、ベランダとかで簡単に育てられるかな）
（紫蘇とか、パクチーとか、ああいう香味野菜が、ベランダにあるといいかも）
（パクチーあったら、山盛りにして食べたいなあ）
（牧野さんに聞けば、判るかな）


久しぶりに、ずっと仕舞いこんだままだったデジタルのキッケンスケールも出して、材料を軽量していく。

ボウルに、薄力粉とおからとヨーグルトを同量を入れる。
そこにベーキングパウダーと、砂糖を薄力粉の四分の一ほどの量を加えて、刻んだパセリも放り込む。
ボウルの中のものを、一つにまとまるくらいまでさっくりと混ぜ合わせたら、六等分に分けて形を整えるていどに丸める。

バターを使った本格的なスコーンなら、ちゃんと冷蔵庫で冷やしてから成形するのだけれど、そんな本格的なスコーンではないので、そんな手間はかけない。
というか、本格的に作ろうとしたら、まず粉や砂糖などの材料もボウルなどの道具も、事前に冷やしておくところから始まるので、時間も手間もそこそこにかかる。
とても、こんな時間からお手軽にひょいとは作れない。
このレシピは、こういうとき便利だった。

二〇〇度設定で予熱しておいたオーブンの用意ができたところで、クッキングシートを敷いた天板の上に、六等分に切った生地を置き、二十分焼く。

オーブンの中を見ながら、甘みが足りないようなら、食べるときに蜂蜜をかけるかジャムでものせればいいわねと頷いた。