リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
パウンド型をオーブンに入れて焼き始めて、明子はリビングに戻った。
(ひとりご飯にしてはさ)
(ちゃんと手間をかけたご飯だよね。うん)
(今日もちゃんとがんばったぞ)
明子の心の中に、ずっしりという重量感を持って存在していた鬱々とした気分も、くさくさとした気分も、いつの間にか小さくなって軽くなっていた。
料理のような作業は、昔から、明子にはいい気分転換になった。
リビングのテーブルに置いたそれを見て、満足げな笑みを頬に作った明子は、ふと、島野を真似て携帯電話で写真を撮ってみた。
(おぉ。なかなか、美味しそうに撮れたかもだわ)
このオムライスを誰かに見せたいなあと思いながら、いただきますと明子は小さな声で呟いて食べ始めた。
(うん。ケチャップ味にハズレなし!)
おいしいなと、わざとらしいほどはしゃいだ声で、大きな独り言を言いながら、明子は食べ進めていく。
そうでもしていないと、せっかく軽くなった気分が、一人ご飯の寂しさに、また沈んでしまいそうだった。
今までずっと、一人だったのに。
それを寂しいなんて思わなかったのに。
なのに、今では一人で過ごすこの時間に寂しさを覚えている自分がいることに、明子は苦笑するしかなかった。
携帯電話の時間を見ると、そろそろ、二十二時を過ぎようとしていた。
(メール、送ってみようかな)
(やめておいた方がいいかな)
(また、お説教かも。こんなに時間にまた飯かって)
(それとも、うまそーって笑ってくれるかな)
(まだ、仕事してるのかな)
(なのに、こんなことでメールしたら、仕事中だぞって怒るかも)
携帯電話を手にしたり離したりしながら、明子はそんな取り留めのないことを、ぐずぐずと考え続けた。
(ひとりご飯にしてはさ)
(ちゃんと手間をかけたご飯だよね。うん)
(今日もちゃんとがんばったぞ)
明子の心の中に、ずっしりという重量感を持って存在していた鬱々とした気分も、くさくさとした気分も、いつの間にか小さくなって軽くなっていた。
料理のような作業は、昔から、明子にはいい気分転換になった。
リビングのテーブルに置いたそれを見て、満足げな笑みを頬に作った明子は、ふと、島野を真似て携帯電話で写真を撮ってみた。
(おぉ。なかなか、美味しそうに撮れたかもだわ)
このオムライスを誰かに見せたいなあと思いながら、いただきますと明子は小さな声で呟いて食べ始めた。
(うん。ケチャップ味にハズレなし!)
おいしいなと、わざとらしいほどはしゃいだ声で、大きな独り言を言いながら、明子は食べ進めていく。
そうでもしていないと、せっかく軽くなった気分が、一人ご飯の寂しさに、また沈んでしまいそうだった。
今までずっと、一人だったのに。
それを寂しいなんて思わなかったのに。
なのに、今では一人で過ごすこの時間に寂しさを覚えている自分がいることに、明子は苦笑するしかなかった。
携帯電話の時間を見ると、そろそろ、二十二時を過ぎようとしていた。
(メール、送ってみようかな)
(やめておいた方がいいかな)
(また、お説教かも。こんなに時間にまた飯かって)
(それとも、うまそーって笑ってくれるかな)
(まだ、仕事してるのかな)
(なのに、こんなことでメールしたら、仕事中だぞって怒るかも)
携帯電話を手にしたり離したりしながら、明子はそんな取り留めのないことを、ぐずぐずと考え続けた。