リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
メールくらいで、なんでこんなに悩んでいるんだろうと、明子はうなだれた。
(あとは、送信ボタンを押すだけなのに)
(書く事なんて、見つからないよ)
(ないんだもん)
(ただ、うまそうだなって、そう言ってくれる牧野さんの声が、聞きたいだけなんだもん)
(それだけなんだもん)
(もう、クタクタなんだもん)
(だから、声が聞きたいだけなんだもん)
送ろうか、止めようか、迷って迷って迷い続けた明子の指は、思い切ったようにえいっと、送信ボタンを押した。
そうして、明子はまるでいたずらの証拠隠滅を図るかのように、携帯電話を慌てて閉じた。
やたらと、胸が早鳴った。
(お、送っちゃった)
(なんで、こんな緊張してんの、あたし)
(どんだけ乙女なのよ)
(もう、乙女なんて年じゃないじゃん)
(バカですか、明子さん)
テーブルに突っ伏して、『高杉兄弟』の笑顔を間近で眺める。
(なんだこりゃなんて、呆れてないかな)
(あれでさ、公私の区別しないの、あんがい、嫌うんだよね、牧野さん)
(自分のことは棚上げでさ)
(やっぱり、やめとくべきだったかな)
(でもさ)
(でも、ですよ)
(一応、彼女に昇格したんだよね?)
(間違い、ないよね?)
(そうだよね?)
(あたし、もう、仕事終わってるんだしさ)
(仕事中に、メールしてるわけじゃないしさ)
(ねえ、ねえ)
(どう思う?)
頭の中で『高杉兄弟』と会話をしているように、明子はぶつぶつと、小さな独り言を呟き続けた。
(あとは、送信ボタンを押すだけなのに)
(書く事なんて、見つからないよ)
(ないんだもん)
(ただ、うまそうだなって、そう言ってくれる牧野さんの声が、聞きたいだけなんだもん)
(それだけなんだもん)
(もう、クタクタなんだもん)
(だから、声が聞きたいだけなんだもん)
送ろうか、止めようか、迷って迷って迷い続けた明子の指は、思い切ったようにえいっと、送信ボタンを押した。
そうして、明子はまるでいたずらの証拠隠滅を図るかのように、携帯電話を慌てて閉じた。
やたらと、胸が早鳴った。
(お、送っちゃった)
(なんで、こんな緊張してんの、あたし)
(どんだけ乙女なのよ)
(もう、乙女なんて年じゃないじゃん)
(バカですか、明子さん)
テーブルに突っ伏して、『高杉兄弟』の笑顔を間近で眺める。
(なんだこりゃなんて、呆れてないかな)
(あれでさ、公私の区別しないの、あんがい、嫌うんだよね、牧野さん)
(自分のことは棚上げでさ)
(やっぱり、やめとくべきだったかな)
(でもさ)
(でも、ですよ)
(一応、彼女に昇格したんだよね?)
(間違い、ないよね?)
(そうだよね?)
(あたし、もう、仕事終わってるんだしさ)
(仕事中に、メールしてるわけじゃないしさ)
(ねえ、ねえ)
(どう思う?)
頭の中で『高杉兄弟』と会話をしているように、明子はぶつぶつと、小さな独り言を呟き続けた。