リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
『木村のメールが気になったんで、折り返して電話して、どんな様子かは聞いたんだ。無理そうだな』
「一応、明日の様子に期待をしてみようかと思うんですが、かなり望み薄いかもです。変わらないようなら、これ以上は無理です。川田主任たちも原田さんの声を聞くだけで、苛立ってきちゃって、仕事に集中できなくなってきてますし」

ただ、君島さんのことが心配で。
沈んだ声でそういう明子に、悪かったよ、変な話を聞かせてと牧野は詫びた。

『そんな嫌味を言う連中もいるっていうだけの話しだから、あんまり気にするな。だいたい、君島さんがそんな連中に負ける訳ないだろ』
「そりゃ、そうですけど。今になって気にするなっていうなら、聞かせないでくださいよぉ」

ぷんと、頬を膨らませてそういう明子の顔が見えているかのように、拗ねるなよと、牧野は電話の向こうで苦笑していた。

『悪かったって。もともと、やる気の無いやつだったけどな、それ加速させちまったのはお嬢様方だしよ。あいつらがこなけりゃ、なんとかなったかもしれないんだけどなって、君島さんも言ってたからさ。最後の情けで小杉に預けてみるかって思ったら、お前もグダグダ言うからさ。ついな』
「グダグダって。昨日も言いましたけど、君島さんがダメなのに、私なんかがどうにかできるわけないじゃないですか。あんな子、ホントに初めてみましたよ。何度も同じこと聞いてくるし」
『けっきょく、新人のときから進歩なしか、あいつ』

明子の言葉に、うんざりとした声で牧野が吐き出されたその言葉に、進歩なしってなんですかと明子は聞き返した。

『何度も、同じこと聞いてくるだろ、あいつ』
「はい。こういう嫌がらせもあるんだなって、びっくりです」
『違うんだよ。こつちはな、何度も同じことを聞いてくるように思うけどな、本人にしてみると、同じことを聞いているつもりはないらしい』
「は?」

思いがけない牧野の言葉に、明子は目をぱちくりとさせた。
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