リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
正当な権利と言えば権利なのだが、現実問題、男性上司に生理で休みますとは言いづらいというのが、女性の本音だ。
恋人にだって、なにかのきっかけがないと、口にすることが躊躇われる話題だ。
入社して十年以上になるけれど、今まで生理による体調不良であったとしても、それをきちんと申告して生理休暇を取った女性社員に、明子は会ったことなどなかった。
もちろん、明子自身も使ったことなどなかった。
だから、牧野の言葉は明子には俄には信じられなかった。
訝しがると明子に、牧野は淡々と仕事の話しでもしているような口振りで、喋り続けた。
『なんかな。酷いときは腰まで痛くて起きられなくなるって言われてな。まだ新人のときだから、有給もそんなにないだろ。だから、使えるものなら使いたいって言われてな。まあ、会社が与えている権利だからな。俺も部長も承認の判押したよ』
「まあ、却下はできませんよね」
『それからだな。森口だの西岡(にしおか)なんかも使いだすようになってきてな。部長も、もう免疫できて慣れてとさ』
まあ、他の部じゃあんまりいないらしいけどな。
そう続けられた牧野の言葉に「そうですね、あんまり聞かないです」と、明子も同意するように頷いた。
世代の差ってやつなのかしらねと考えながら、その女性社員が気になった。
(もしかして……)
(木村くんが言ってた子かな?)
牧野の話しを聞きながら、木村から聞いた同期の女性社員のことをなんとなく思い出した明子は、それを牧野に尋ねてみようかと口を開いた。
「その女子って、もしかして……」
そこまで言って、近づいてくる救急車のサイレンに気づいた明子は、その音に気をとられて言葉を途切らせた。
(なんか……)
(こっちに、向かって来てない?)
次第に大きくなってくる音に、ベランダに出てみようかと立ち上がった明子の耳に、電話の向こうの牧野の呟きが聞こえてきた。
恋人にだって、なにかのきっかけがないと、口にすることが躊躇われる話題だ。
入社して十年以上になるけれど、今まで生理による体調不良であったとしても、それをきちんと申告して生理休暇を取った女性社員に、明子は会ったことなどなかった。
もちろん、明子自身も使ったことなどなかった。
だから、牧野の言葉は明子には俄には信じられなかった。
訝しがると明子に、牧野は淡々と仕事の話しでもしているような口振りで、喋り続けた。
『なんかな。酷いときは腰まで痛くて起きられなくなるって言われてな。まだ新人のときだから、有給もそんなにないだろ。だから、使えるものなら使いたいって言われてな。まあ、会社が与えている権利だからな。俺も部長も承認の判押したよ』
「まあ、却下はできませんよね」
『それからだな。森口だの西岡(にしおか)なんかも使いだすようになってきてな。部長も、もう免疫できて慣れてとさ』
まあ、他の部じゃあんまりいないらしいけどな。
そう続けられた牧野の言葉に「そうですね、あんまり聞かないです」と、明子も同意するように頷いた。
世代の差ってやつなのかしらねと考えながら、その女性社員が気になった。
(もしかして……)
(木村くんが言ってた子かな?)
牧野の話しを聞きながら、木村から聞いた同期の女性社員のことをなんとなく思い出した明子は、それを牧野に尋ねてみようかと口を開いた。
「その女子って、もしかして……」
そこまで言って、近づいてくる救急車のサイレンに気づいた明子は、その音に気をとられて言葉を途切らせた。
(なんか……)
(こっちに、向かって来てない?)
次第に大きくなってくる音に、ベランダに出てみようかと立ち上がった明子の耳に、電話の向こうの牧野の呟きが聞こえてきた。