リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「うちは、弟のほうが、俺より早く結婚してな。子どもができて、前の家じゃ手狭だなって話しになって。ちょうどそのころ、大学病院のほうに、店を構えるのにいい物件が見つかったから、店をそっちに移して、ついでに前の家は処分して、店の近くに家を建てることにしてな」
訥々とした口調で続けられる思い出話のような話しに、明子は静かに耳を傾け続けた。
「新しい家ができて、弟の子どもが生まれて。生まれたばかりの赤ん坊を囲みながら、みんなでその家で飯を食った。親父殿とお袋殿と弟と義妹と赤ん坊と、俺でな。楽しそうだった。みんな、幸せそうで楽しそうでさ。その顔を見てたら、俺はもうここには、来ないほうがいいなって、なんかそう思っちまったんだよな」
その日の光景を思い浮かべているかのような、そんな目をしている牧野を見つめていた明子は、思わず目を伏せた。
自分も牧野と同じだと、そう思った。
子どものころを過ごした自分の部屋は跡形もなくなくなり、新しくなった家に居場所を見つけられず、帰ってきてこっちで暮らせばいいと言ってくれた義兄の言葉に、明子は頷くことができなかった。
食卓を囲む楽しそうな彼らの中に、入っていくことができなかった。
その中で、作り笑いを浮かべているしかできない自分がいた。
牧野も、自分と同じような疎外感を味わっていたのかと思いながら、明子はその顔を見つめていたが、変わらぬ口調で淡々と続いた言葉の先に息を飲んだ。
「俺な、養子なんだ」
静かに告げられた牧野からの予想外の告白に、明子は息を詰めて牧野の顔を見つめた。
泣いているような、笑っているような、なんとも言い難い微妙な顔つきで、牧野は手元を見つめていた。
「親父殿とお袋殿は、ホントは叔父さん叔母さんで、弟は従兄弟になるんだ。七つのときに、親父殿とお袋殿が、俺を引き取ってくれた」
明子が息を飲んだ気配を感じたのか、ゆるりと明子に向けられた牧野は「悪い、いきなり変な話し始めて」と、明子に笑いかけながら詫びた。
訥々とした口調で続けられる思い出話のような話しに、明子は静かに耳を傾け続けた。
「新しい家ができて、弟の子どもが生まれて。生まれたばかりの赤ん坊を囲みながら、みんなでその家で飯を食った。親父殿とお袋殿と弟と義妹と赤ん坊と、俺でな。楽しそうだった。みんな、幸せそうで楽しそうでさ。その顔を見てたら、俺はもうここには、来ないほうがいいなって、なんかそう思っちまったんだよな」
その日の光景を思い浮かべているかのような、そんな目をしている牧野を見つめていた明子は、思わず目を伏せた。
自分も牧野と同じだと、そう思った。
子どものころを過ごした自分の部屋は跡形もなくなくなり、新しくなった家に居場所を見つけられず、帰ってきてこっちで暮らせばいいと言ってくれた義兄の言葉に、明子は頷くことができなかった。
食卓を囲む楽しそうな彼らの中に、入っていくことができなかった。
その中で、作り笑いを浮かべているしかできない自分がいた。
牧野も、自分と同じような疎外感を味わっていたのかと思いながら、明子はその顔を見つめていたが、変わらぬ口調で淡々と続いた言葉の先に息を飲んだ。
「俺な、養子なんだ」
静かに告げられた牧野からの予想外の告白に、明子は息を詰めて牧野の顔を見つめた。
泣いているような、笑っているような、なんとも言い難い微妙な顔つきで、牧野は手元を見つめていた。
「親父殿とお袋殿は、ホントは叔父さん叔母さんで、弟は従兄弟になるんだ。七つのときに、親父殿とお袋殿が、俺を引き取ってくれた」
明子が息を飲んだ気配を感じたのか、ゆるりと明子に向けられた牧野は「悪い、いきなり変な話し始めて」と、明子に笑いかけながら詫びた。