リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「それで、結婚しようなんて、考えちゃったんですか?」

しょうがない人だなあと、苦笑する明子に、牧野は鼻の頭を引っかくように掻いた。

「それでって言うか、なんか、そんなタイミングだったんよな」

その当時のことを思い出すように、牧野は鼻に皺を寄せたような顔で喋り出した。

「そのころ、パンチパーマのおっさんから、見合いの話しに貰ってな」
「また、お客様をそんな言いかたして」

困った上司だわと頭を抱える素振りで窘める明子の額を、牧野は笑いながら小突いた。

「父親と兄貴にいい人だったし、母親も明るい人でな。何度か遊びに行ったけど、気さくで温かい雰囲気の家族だったんだ」

牧野はなによりもそこに惹かれたことを知った明子は、少しだけ気鬱になった。
自分にはないものだと、明子は思った。
牧野が自分と自分の家族の関係を知ったら、がっかりしてしまうのではないかという不安を覚えた。

「こういう家で育ってきた人となら、いい家族を作れるんじゃないかなって。正直、生みの親がロクでもない親でな。だから、結婚するとか、親になるとか、そういうことがずっと怖かったんだけどな。こういう家族の中で育った人となら、こういう家族を作れるかなって、そんなこと考えて、つい、結婚しちまった」
「ついって。若気の至りってやつですか。もしかして」
「だな」
「ひどいなあ」
「な。そういう意味では悪いことしちまったなって思ったよ。離婚したとき。こんなのと結婚させちまってさ」

ふっと、牧野が息を吐き、明子もつられたように息を吐いた。
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