リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「父との関係が本当に悪くなったのは、働くようになってからなんです。毎日毎日、残業で帰りが遅いとよく言われました。仕事仕事って、お前は男かって」
「はあ? マジで?」
「そういう人なんです。別に珍しくないと思いますけど。ウチの会社にだって、いるじゃないですか。女が仕事を頑張ると、嫌みみたいなこと吐き捨てて行くような人」
「あー。そういうことか」
明子の説明で合点がいったように牧野も頷いた。
確かに、女というだけでその存在を見下して、その仕事に対しても正当な評価をしないような輩もいる。そんな考えの連中は、確かにいる。牧野にも、何人か思い当たる人物がいた。
ただ、明子の父親までもが、そんなさもしい了見の男とは思わず、牧野は驚いた。
昼も夜もなく働き、休日でさえ出勤していた明子のことを、父親はなんと言って詰っていたのかと、それを思うと牧野は知らず唇をかみ締めていた。
平気な顔をして、徹夜でもなんでもしていたけれど、そのことで家の中では辛い立場にさせていたのかもしれないと、牧野はそんなことを考えた。
そんな牧野に、明子は笑みを浮かべた顔で言葉を続けていく。
「簿記の勉強してたときも、そんな勉強してなんになるんだって言うから、昇進するのに必要だからって答えたら、お前はそんなに出世したいのかって。男だったら良かったのにな。生まれてくるとき、ホントは男に生まれるはずが、間違えてきちまったんだなって」
女が出世を考えるなんてロクなもんじゃないって、実の親に言われちゃいましたよ。
笑みを浮かべたままの表情で固まっている明子の頬に、遠慮がちな牧野の手が添えられた。
「だから、試験、受けなかったのか?」
「まあ、他にもいろいろと理由はありますけど。留めは、たぶん、それですね」
明子の言葉に、牧野はそうかと小さな声で相槌を打った。
目の前のそんな牧野を見ながら、不思議だなあと、明子は今の状況がおかしくなってきた。
今まで誰にも話したことのないこんな話しを、こんなふうに牧野と向き合いながら話していることが、なんだか夢の中のできごとのように感じられて仕方なかった。
「お袋さんは、お前の味方になってくれなかったのか?」
牧野の静かな問いかけに、明子は苦しそうに笑った。
「母とは、ずっと、うまくいってません」
あの人にとっての大切な子どもは姉だけだったんですと続いた明子の言葉に、牧野は言葉を無くしたように明子を見つめていた。
「はあ? マジで?」
「そういう人なんです。別に珍しくないと思いますけど。ウチの会社にだって、いるじゃないですか。女が仕事を頑張ると、嫌みみたいなこと吐き捨てて行くような人」
「あー。そういうことか」
明子の説明で合点がいったように牧野も頷いた。
確かに、女というだけでその存在を見下して、その仕事に対しても正当な評価をしないような輩もいる。そんな考えの連中は、確かにいる。牧野にも、何人か思い当たる人物がいた。
ただ、明子の父親までもが、そんなさもしい了見の男とは思わず、牧野は驚いた。
昼も夜もなく働き、休日でさえ出勤していた明子のことを、父親はなんと言って詰っていたのかと、それを思うと牧野は知らず唇をかみ締めていた。
平気な顔をして、徹夜でもなんでもしていたけれど、そのことで家の中では辛い立場にさせていたのかもしれないと、牧野はそんなことを考えた。
そんな牧野に、明子は笑みを浮かべた顔で言葉を続けていく。
「簿記の勉強してたときも、そんな勉強してなんになるんだって言うから、昇進するのに必要だからって答えたら、お前はそんなに出世したいのかって。男だったら良かったのにな。生まれてくるとき、ホントは男に生まれるはずが、間違えてきちまったんだなって」
女が出世を考えるなんてロクなもんじゃないって、実の親に言われちゃいましたよ。
笑みを浮かべたままの表情で固まっている明子の頬に、遠慮がちな牧野の手が添えられた。
「だから、試験、受けなかったのか?」
「まあ、他にもいろいろと理由はありますけど。留めは、たぶん、それですね」
明子の言葉に、牧野はそうかと小さな声で相槌を打った。
目の前のそんな牧野を見ながら、不思議だなあと、明子は今の状況がおかしくなってきた。
今まで誰にも話したことのないこんな話しを、こんなふうに牧野と向き合いながら話していることが、なんだか夢の中のできごとのように感じられて仕方なかった。
「お袋さんは、お前の味方になってくれなかったのか?」
牧野の静かな問いかけに、明子は苦しそうに笑った。
「母とは、ずっと、うまくいってません」
あの人にとっての大切な子どもは姉だけだったんですと続いた明子の言葉に、牧野は言葉を無くしたように明子を見つめていた。