リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「まだ、小学校に入る前。夜中に物音で目が覚めたら、家には誰もいなくて。その日、父は夜勤の日でした。家には母と姉と、私。でも、姉が夜中に熱を出して、母は姉を連れて病院に行ってしまったんです。そのときの物音で、私は目が覚めたんです」
あの夜が、明子の中に蘇ってきた。
一人ぼっちで放り出された夜が、蘇ってきた。
「誰もいない家で、母を捜して、父を捜して、姉を捜して。泣いて泣いて泣いて泣いて。まだ、玄関を開けることはできなかったから、外には出られませんでしたけど。泣き疲れて眠るまで、母を捜してました」
じんわりとこみ上げてきたものに、明子の視界はぼやけ始めた。
-お前も。一人ぼっちの夜があったんだな。
耳を掠めた牧野のその呟きに、下を向きかけていた明子は思わず顔を上げ、牧野を見つめた。
明子の眦に浮かび始めていた雫に気づいた牧野は、指でなぞるようにしてその雫を拭った。
明子を宥めながら、牧野もまた泣き出しそうに顔を歪めていた。
あの日から消えない、明子の中の寂しさと心細さ牧野にも伝染して、牧野の中にある寂しさと心細さを呼び起こしてしまったようだった。
その顔に、牧野にも同じように一人ぼっちだった夜があったことを明子は察した。
きっと、それは雷り鳴り響く夜だったに違いないと、その顔を見て明子は悟った。
明子は気持ちを振り絞るようにして、微笑を浮かべた顔で言葉の先を続けた。
「目が覚めたときは、父と母が怒鳴りあっていました。その声で、目が覚めたんです」
小さな娘を一人残していった母を父は責め、母は仕方がなかったと喚いていた。
あの夜が、明子の中に蘇ってきた。
一人ぼっちで放り出された夜が、蘇ってきた。
「誰もいない家で、母を捜して、父を捜して、姉を捜して。泣いて泣いて泣いて泣いて。まだ、玄関を開けることはできなかったから、外には出られませんでしたけど。泣き疲れて眠るまで、母を捜してました」
じんわりとこみ上げてきたものに、明子の視界はぼやけ始めた。
-お前も。一人ぼっちの夜があったんだな。
耳を掠めた牧野のその呟きに、下を向きかけていた明子は思わず顔を上げ、牧野を見つめた。
明子の眦に浮かび始めていた雫に気づいた牧野は、指でなぞるようにしてその雫を拭った。
明子を宥めながら、牧野もまた泣き出しそうに顔を歪めていた。
あの日から消えない、明子の中の寂しさと心細さ牧野にも伝染して、牧野の中にある寂しさと心細さを呼び起こしてしまったようだった。
その顔に、牧野にも同じように一人ぼっちだった夜があったことを明子は察した。
きっと、それは雷り鳴り響く夜だったに違いないと、その顔を見て明子は悟った。
明子は気持ちを振り絞るようにして、微笑を浮かべた顔で言葉の先を続けた。
「目が覚めたときは、父と母が怒鳴りあっていました。その声で、目が覚めたんです」
小さな娘を一人残していった母を父は責め、母は仕方がなかったと喚いていた。