リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「すいません。湿っぽい話、始めちゃって」
「バカ。俺が始めた話しだろ」
出てきた言葉はいつもの軽口だったが、まだ暗いその声に、明子は勢いよく立ち上がった。
「お茶。淹れ直してきます。冷めちゃいましたもんね」
そう言って、牧野の返事も待たずに明子は立ち上がった。
「お茶で、いいんですか?」
キッチンから牧野に背を向けたまま、明子はそう声をかけた。
「コーヒーとかのほうがいいですか? 夜ですけど。冷たいものがいいなら……」
話しかけても答えのない牧野にまだ沈んでいるのだろうかと、明子は肩越しに背後を見て、思わず吹き出した。
ソファーの背もたれに大きく背中を預けるようにして座った牧野は、目を瞑り寝息を立てていた。
(そう言えば……)
(今夜も、やけに手が温かかったわね)
足音を忍ばせて近づいてその顔を覗きこんだ明子は、これは起こしても起きないパターンだわねと判断した。
なにか上に掛けてやろうと、薄いタイルケットを持ってリビングに戻ると、それをふわりと牧野に掛けた。
顔を少しだけ近づけて、寝顔を覗き込む。
長い睫が、閉じられた下瞼に影を作っていた。
髭は薄いほうだと聞いたことがあったが、その言葉通り、この時間になっても肌はつるりとしていた。
朝は柑橘系の爽やかな香りがするが、この時間になって漂う残り香は、甘い香りだった。
ここ最近、このパターンを繰り返しているわねと、明子は笑いながらその顔に見つめて、鼻の頭を撫でるように突っついた。
静かに牧野から離れようとした明子の腰に、いきなり、牧野の手が回り、明子を体を引き寄せるようにしながら、胸に顔を埋めるように抱きしめてきた。
甘えるように顔を擦りつける牧野に、明子は小さな悲鳴を上げる。
「バカ。俺が始めた話しだろ」
出てきた言葉はいつもの軽口だったが、まだ暗いその声に、明子は勢いよく立ち上がった。
「お茶。淹れ直してきます。冷めちゃいましたもんね」
そう言って、牧野の返事も待たずに明子は立ち上がった。
「お茶で、いいんですか?」
キッチンから牧野に背を向けたまま、明子はそう声をかけた。
「コーヒーとかのほうがいいですか? 夜ですけど。冷たいものがいいなら……」
話しかけても答えのない牧野にまだ沈んでいるのだろうかと、明子は肩越しに背後を見て、思わず吹き出した。
ソファーの背もたれに大きく背中を預けるようにして座った牧野は、目を瞑り寝息を立てていた。
(そう言えば……)
(今夜も、やけに手が温かかったわね)
足音を忍ばせて近づいてその顔を覗きこんだ明子は、これは起こしても起きないパターンだわねと判断した。
なにか上に掛けてやろうと、薄いタイルケットを持ってリビングに戻ると、それをふわりと牧野に掛けた。
顔を少しだけ近づけて、寝顔を覗き込む。
長い睫が、閉じられた下瞼に影を作っていた。
髭は薄いほうだと聞いたことがあったが、その言葉通り、この時間になっても肌はつるりとしていた。
朝は柑橘系の爽やかな香りがするが、この時間になって漂う残り香は、甘い香りだった。
ここ最近、このパターンを繰り返しているわねと、明子は笑いながらその顔に見つめて、鼻の頭を撫でるように突っついた。
静かに牧野から離れようとした明子の腰に、いきなり、牧野の手が回り、明子を体を引き寄せるようにしながら、胸に顔を埋めるように抱きしめてきた。
甘えるように顔を擦りつける牧野に、明子は小さな悲鳴を上げる。