リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「なにを笑ってんだよ?」
「えー。思っていた以上に、遊んでる人だったんだなあと。私、牧野さんは少し、お堅いところがあると思ってましたよ」

うっかり夢を見ていたみたいですよと、笑っていた理由を告げた明子に、バカか、お前はと牧野も呆れた。

「だいたいな、お前にお堅いなんて言われたくねえや。少なくとも、お前よりはいろいろと遊んでるよ。離婚した後も、やることはやれたからな。困ることはなかったぞ」

あっけらかんと、そんなとんでもないことを自己申告する牧野に、明子はこれでもかと盛大な息を吐き出して牧野を見た。

「なんか、付き合いだしたら、たーくさん、修羅場ありそうでイヤかも。このモテモテの色男さん」
「バカ。真面目に付き合ってる女がいるときは遊ばねえよ。付き合う前に遊んでるのがいたら、全部キレイに切るから、安心しろ」
「遊んでいた人がいる時点で、ちょっとイヤかも」

顔をしかめる明子に、牧野は勘弁してくれよと拗ねた。

「俺だって、誰かと飯を食いたいときとか、セックスしたいときとかくらいあるんだよ。一人のときに、後腐れなく楽しく遊んでいたくらいは許せよ。言っとくけどな。この春からは、飯だって誰かと食ったりしてないからな。ホントだぞ」

ムキになってそう言い立てる牧野に、明子は「はいはい、判りました」と、むずかる子どもをあやす母親のように髪を撫でてあやした。

「信じろよっ」

その必死の様相に、自然と明子の頬に嬉しそうな笑みが浮かんだ。

「はい。信じます」

細めた目で牧野を愛しげに見つめ、そう返事をする明子に「おう、今度は素直だな」と、牧野も満足そうに笑った。
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