リスタート ~最後の恋を始めよう~ 【前編】
「だって。昨日、努力するって言ってくれたじゃないですか。あれから怒鳴ってませんよ、牧野さん」
柔らかな笑い混じりの声で、明子は牧野に話しかけ続ける。
「そう、か?」
「私、昔からよく怒鳴られてきたけど、八つ当たりで怒鳴られたことだけは、ありませんでしたよ」
「そんなに怒鳴ってねえだろ」
「そんなことないですよ」
「そんな覚え、まったくねえんだけどなあ」
「私が、誰かに怒られなきゃダメなことしたときは、いつも牧野さんが、ちゃんと怒ってくれたんですよ」
だから、牧野さんは鬱憤晴らしで暴力を振るったり、暴言を吐いたりするような人になんてなりませんよと、明子はゆっくりとした口調で、牧野に言い聞かせ続けた。
ゆらゆらと揺れる牧野の瞳に、明子の優しく穏やかな笑顔が映った。
大丈夫ですよと、魔法をかけるように、明子は何度もそう牧野に囁き続けた。
明子を掻き抱くように両腕を背に回して、牧野は明子を抱き寄せると、またその胸に顔を埋めるように明子にしがみ付いた。
「不思議だよなあ」
ぽつりと牧野はそう呟いた。
「不思議?」
なにがですと首を傾げる明子に、牧野は淡々と答えた。
「お前が気になって、でも、一緒にいられなくて。これが俺の選んだ道なんだって、そう言い聞かせて。お前のこと諦めて。別の相手と生きること決めて。選んだ人と幸せになろうと思った」
本気で、そう思った。
そう続いた牧野の言葉に「私も、そうですよ」と、明子は静かな声で答えた。
柔らかな笑い混じりの声で、明子は牧野に話しかけ続ける。
「そう、か?」
「私、昔からよく怒鳴られてきたけど、八つ当たりで怒鳴られたことだけは、ありませんでしたよ」
「そんなに怒鳴ってねえだろ」
「そんなことないですよ」
「そんな覚え、まったくねえんだけどなあ」
「私が、誰かに怒られなきゃダメなことしたときは、いつも牧野さんが、ちゃんと怒ってくれたんですよ」
だから、牧野さんは鬱憤晴らしで暴力を振るったり、暴言を吐いたりするような人になんてなりませんよと、明子はゆっくりとした口調で、牧野に言い聞かせ続けた。
ゆらゆらと揺れる牧野の瞳に、明子の優しく穏やかな笑顔が映った。
大丈夫ですよと、魔法をかけるように、明子は何度もそう牧野に囁き続けた。
明子を掻き抱くように両腕を背に回して、牧野は明子を抱き寄せると、またその胸に顔を埋めるように明子にしがみ付いた。
「不思議だよなあ」
ぽつりと牧野はそう呟いた。
「不思議?」
なにがですと首を傾げる明子に、牧野は淡々と答えた。
「お前が気になって、でも、一緒にいられなくて。これが俺の選んだ道なんだって、そう言い聞かせて。お前のこと諦めて。別の相手と生きること決めて。選んだ人と幸せになろうと思った」
本気で、そう思った。
そう続いた牧野の言葉に「私も、そうですよ」と、明子は静かな声で答えた。