キスはおとなの呼吸のように【完】
「すまない。終電をのがして眠りこけていたらしい。始発が動きだしたから、今から帰る。心配かけて、本当にすまない」

いっしょうけんめいあやまりながら、わたしのほうに顔をむける。
チョップのかたちでパーにのばした手のひらを顔のまえにもっていき、失礼するのポーズをとる。

わたしがへたに声をだし、いらぬ誤解をあたえてしまってももうしわけない。
無言でいちおう頭をさげた。

大上先輩は玄関を抜け、わたしの部屋をさっさとでていく。

玄関のドアがしまると、台風が去ったあとの雰囲気で、なんだかぽかんとしてしまう。
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