キスはおとなの呼吸のように【完】
「それ……」

口をひらきかけて、わたしは言葉に詰まった。
いつかカズトが恥ずかしそうに話してくれた、こどものころの話を思いだした。

両親との唯一の思い出。

カズトは震える手でガラスといっしょにステッカーを拾いあげる。

おや指とひとさし指で、だいじそうに持ちあげる。
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