キスはおとなの呼吸のように【完】
「痛っ……」

カズトの腕が一瞬跳ねた。

つまんでいた破片が、指から離れ地面に落ちて、亀裂にそってふたつに割れた。

ぶかっこうな二分割で上下にわかれる犬のイラスト。

これはもう、きれいになんてはがれることもできなければ、ふたたび貼りなおすこともできない。

わたしはカズトの右手に視線を移した。
カズトの右手のひとさし指はざっくり切れて、まっかな血がじんわりとにじんできていた。
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