優しいなんて、もんじゃない



そう言って、面倒だと伝わるよう盛大に溜め息を吐いてやれば何故か嬉しそうに顔を歪ませて笑うユウ。ドMか。


くるり、踵を返して歩き出す私の足音と。それから一拍置いて反対方向へと向かって遠ざかる足音に、振り返った。



ゆらゆら、なんだか危なげに。

漆黒の、深夜の空を見上げて歩くその後ろ姿は何処か洗練されていて。




瞬間的。

最早、無意識。



この男は、全てに関して綺麗だと思った。


それは整った顔立ちだとか、すらりと長い足だとか、黒曜石を埋め込んだような瞳だとか。

(ちょっと難ありだけど)真っ直ぐな性格だとか。




コイツの持つもの全てが魅力的に思えて。

嗚呼、嫌いにはなれないタイプなんだとさえ考えている自分がいる。


なんだもう、気持ち悪い。こんなこと考えるなんて私じゃない。



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